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恐怖を越えた声2

 受取人側の証言者はまだ若かった。そして、なぜこんなことになっているんだろうとでも言うような顔をしている。そうだよな。受取人側としては輸入許可書を出すだけで、まさか輸出側が水増しした書類を出しているだなんて思わないから、素直に実際受け取る数での輸入許可書を提出するだろう。さすがのオマンド子爵もヴァルター侯爵も受取人側の証人まで出てくるとは思わなかったのだろう。2人ともさらに血の気の引いた顔をしている。 「ビクトル・ハルトマンです」  証人は名前を名乗る。 「輸入許可書の記載に間違いはないのですね?」  議長が確認する。   「間違いありません。実際に受け取った数と一致していることは倉庫の人間と一緒に確認しているので、私だけが知っているわけではありませんし、必要とあらば倉庫の人間も呼びますが」  ここまで言われてはオマンド子爵やヴァルター侯爵だけでなく、議長も聴衆もなにも言えない。完全なる証言と言えるだろう。それでもオマンド子爵とヴァルター侯爵は引き下がらない。 「彼も倉庫の人間もぐるかも知れないじゃないか!」  ここまできても吠えているヴァルター侯爵が惨めだ。オマンド子爵はもう無理だというように真っ青になって震えている。オマンド子爵は落ちたな。あとはヴァルター侯爵だけだ。 「ぐるとかなんですか? 俺は数日前にボワイエ男爵が職場に訪ねてきて書類を確認され、その書類が偽造でないことは確かかと訊かれて、偽造でないと言うと証言を頼まれました。このことは職場の同僚も傍にいたので証言できますが……」  倉庫の人間をぐるだと喚いたけれど、職場の同僚までぐるだと言うつもりだろうか。ここまでの証言を突きつけられて2人は黙ったけれど、レオニスさんはさらに念押しとして、俺の名を呼んだ。 「彼は|来訪者《ヴィジター》で、私の客人のタクヤ・キヨイシです」  レオニスさんが俺をヴィジターだと人前で明言するのは初めてだった。それを聞いた聴衆はざわざわと騒ぎ出す。それを見て、異世界人は少ないんだなと思う。まぁ、そんなに多かったら逆に怖いけど。  俺は一歩前に出てヴィクトルさんの隣に立つ。 「彼は私と一緒に賊に襲われています。そして深い傷を受けました」  レオニスさんがそう言うと、俺は服の袖をたくし上げ、腕に負った傷を見せる。そこにはヨセフさんが縫った跡がある。その腕を議長に見せると議長は息を飲み、最前列に座っていた議員も傷が見えたのか言葉をなくしている。 「これもデタラメだと言いますか?」 「デタラメだ! デタラメに決まってる! ヴィジターと言うのだって本当かどうかわからないじゃないか!」  ヴァルター侯爵が喚く。この傷がつく賊を襲ったのはオマンド子爵だ。普通ならヴァルター侯爵が焦るはずはない。なのに騒ぐとは、俺が襲わせた背後にはオマンド子爵だけでなくヴァルター侯爵もいたと自ら証言しているようなものだ。それを見逃さないレオニスさんじゃない。 「私と彼を襲った賊はオマンド子爵の紋章の入ったナイフを使っていました。そして彼のことをヴィジターか、と言いました。その者たちの証言も必要でしょうか? 私の仲間が探し出したその賊はオマンド子爵に命じられたと証言しています。命を狙えと言われたと」  え? 命を狙えなんて言われてたのか。そう言われて俺は背筋に冷たい汗が流れた。じゃあ腕の傷だけで済んだのは運が良かったんだ。昔習っていた空手の技を繰り出したけど、それは無駄じゃなかったんだな。もしそれがなかったら俺は今頃、あの世だったのかもしれない。  レオニスさんの言葉にオマンド子爵の顔がみるみる歪んでいく。 「デタラメだ! そんな証言、嘘に決まっている!」 「己! レオニスめ!」  ヴァルター侯爵は黙っていればいいのに、憎々しげにレオニスさんの顔を見る。オマンド子爵の背景に自分がいたと言っているようなものだ。意外と頭悪いんだな。そう思って俺は2人の顔を見た。 「静粛に! 証人は間違いないのですね」  議長に問われて俺は頷いた。 「間違いありません」 「そんなヴィジターだなんて名乗って証人を気取るとかアーゼンハイツ卿に金でも貰ってデタラメを言っているに違いない!」 「では、ヴィジターがこちらに来た際にどうなるかご存知ですか? 魔法酔いというのをするらしく、彼はそのときすごく体調が悪そうで私の屋敷に連れて帰りました。そして彼を診た医師が、彼を魔法酔いだと診断しました。その医師は我が家がいつも診て貰っている医師で、必要とあらばこの場に呼びますが必要ですか?」  次々と出される証拠と証言に議長は目を回しているに違いない。しかし、ここまで証言者を集めるってレオニスさんの仲間は有能だな。かなり動いてくれたのがわかる。俺は証言に嘘偽りはないと、真っ直ぐに議長の顔を見た。

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