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恐怖を越えた声4

 議長がレオニスさんの名誉が回復したことを言うと、数人の貴族が集まってきた。改革派の仲間だろう。 「レオニス。良かった。名誉が回復されて、本当に良かった。動くのが遅くなってすまなかった」 「いや。証人に働きかけてくれて助かった。私1人ではエリクが精一杯だった」 「本当は襲った賊も連れてきたかったんだが、無理だった。証言を引き出すのが精一杯だった」 「賊を探し出すのは大変だっただろう」 「まぁな。それでもレオニスと救世主が怪我をしたことを思えば軽いものさ」  救世主って俺のことか? そうだよな? 異世界人だし。でも、俺としては単にルナのオマケだと思ってるんだけどな。 「で、紹介してくれないのか? 我らの救世主を」 「あぁ。タクヤ・キヨイシだ。神の使いを連れてきた」 「なんだって! 神の使いまで連れてきたのか。いや、神の使いが救世主を連れてきたんだな。はじめまして、ルドルフ・アレッシです。よろしく」 「サルバトール・コルシーニです」 「イバン・ブロッコです」 「ルシアーノ・フィオリです」 「ロメオ・サンチェスです」  改革派の仲間の人、一人一人と握手をして挨拶をした。   「タクヤ・キヨイシです。あの、俺、救世主なんかじゃないですから」  そう、ここは重要だから念を押しておく。   「いや、レオニスを救ってくれたのはタクヤさんのおかげです。牢獄からも救ってくれたでしょう」 「あれは市場の人の協力があったからです。俺1人ではなにもできませんでした」 「でも、庶民が助けてくれたのは、捕まったのがレオニスだからですよ。俺達の中で一番庶民のために動いているのがレオニスですから」  そうなのか。改革派の筆頭みたいだからそうなるんだろうな。でも、いい仲間がいるようでいいな。これなら庶民救済法案通せるかな? ヴァルター侯爵も失脚したし、反対する勢力はあるだろうけれど、ヴァルター侯爵ほどの力を持っている人は少ないんじゃないのかな? この議場の中にオマンド子爵以外にもヴァルター侯爵派はいると思う。でも、ヴァルター侯爵が失脚したのだから、もう力も弱くなるだろう。その隙に法案を通せばいいんだ。ヴァルター侯爵派が新しい派閥として力をつけてくる前に通した方がいい。今なら法案を通すのもそんなに難しいことじゃないと思うんだ。そしてそれはレオニスさんもわかっているようだった。 「ヴァルター侯爵が失脚した今が法案を通すチャンスだ。なんとか通そう」 「ああ。そして少しずつ庶民に還元していこう。そうすればエルドランドはさらに豊かになる」  ああ、いいな。ヴァルター侯爵がいたときはこんなに晴れやかな顔もできなかったんじゃないかな。レオニスさんだって、こんなに晴れやかな表情をしたことはないもんな。 「静粛に!」  わいわいと話していると議長の声が聞こえた。 「議会は3日後まで休廷とする」  そうか。数日間、休廷になるのか。そうだよな。これだけのことがあったんだ。オマンド子爵だけならまだしも、議会の重鎮でもあっただろうヴァルター侯爵が失脚するようなことがあったんだ。高位貴族だからな。侯爵の地位なんて少ないだろうしな。あ! ヴァルター侯爵が失脚したということはリシアさんとの婚約は破棄になるんだろうか。レオニスさんはリシアさんとの婚約を破棄して俺と結婚したいと言ってくれていた。そうしたら、俺は帰らないでここに留まることになるけどいいのかな? 元々、実家にはそんなに帰らなかった。家族との縁は薄いと言える。常々、俺の家族はルナだと思っていたくらいだし。あとは友達か。友達はまた作ればいい。そうしたら、ここに留まってもいいのかもしれない。そしてレオニスさんと家族になりたい。男同士だから子供は生まれないけど。それでも家族にはなれるから。……なんて俺は先走ってなにを考えているんだ。レオニスさんだって気が変わってるかもしれないのに(だとしたらショックだけど)。それになにより、今は法案を通すことの方が先決だ。 「タクヤ。帰ろう」  俺が1人であっちの方へ考えを飛ばしている間に、レオニスさんは仲間の人たちと話しをしていたらしい。 「はい。もうお話は終わったんですか?」 「ああ、終わったよ。だから早く屋敷へ戻ろう。今日は祝いだ。まだ法案は通っていないけれど、ヴァルター侯爵が失脚した祝いだ。これで法案も通しやすくなる」 「そうですね。じゃあ早く帰りましょう」  議事堂の外へ出ると空気が軽くて美味しく感じるのは、きっとひとつ片が付いたからだろう。さあ帰ろう。屋敷の人たちが待ってるだろう。

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