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第3話 「事情」/「白とエメラルド」
砂を払ってコテージへ戻ると、
灯りの下に人影があった。
視線が合ったそのとき、人影がこちらへと近付く。
「Yuto!」
満面の笑み
「…帰ったんじゃなかったのか?」
Yutoの声は静かだった。
Leoはにこにこして答えた。
「予定、全部ずらした」
「……は?」
「しばらく空けた。大丈夫!」
やけに軽いその声はどこか嬉しそうだった
「Yutoと一緒に居たかったから」
ちょっと切ない瞳
……なんなんだ?
さっきまで人のこと散々好き勝手しておいてこの男は何を言っている
「予定ずらしたって、仕事だろ?」
「大丈夫、大丈夫
常連だから、ほら俺魅力的だし」
そう言うと、ウィンクをひとつ寄越したLeoは砂浜の上で夕日をバックにしていたあのときと同じように…
いや、あのときよりも明るくチャーミングで
幾分か幼く見えた
何を言っているのか意味は分からないが、俺が知ったことではないなと思い返しYutoはあっさりと受け流す
「そうか、じゃあおやすみ」
コテージのドアを開けようとする…
「あ!待って待って」
Yutoを引き留めるLeo
Yutoが振り向くと、Leoの手元に乗せられていたのは
「…花?」
「ふふっ綺麗でしょ」
差し出されたのは、白い花。
丸みのある花弁が五枚、
中心に溶けるような淡い黄色。
夜の湿った空気の中で、ほのかに甘い香りを漂わせている。
「ลีลาวดี ?」
Yutoが小さく呟くと、Leoは満足そうに笑った。
「さっき摘んだ。似合うと思って」
「……縁起悪いな」
「昔の話でしょ?今は魅力的」
柔らかく包み込むような笑み
Leoは思ったことが、そのまま表情に滲むらしい
うらやましい
Yutoは胸の奥にすくむ薄暗い感情にそっと蓋をするように口を開いた
「…そうだな、くれるのか?」
「うん!…受け取ってくれる?」
Leoは少し不安げに見つめてくる
夜の灯りを受けて、目の奥が深い緑を帯びた
その顔で言われると
ノーとは言えない
YutoはLeoの手にあるその可憐な花をそっと受け取った
「ありがとな」
「じゃあ、おやすみゆっくり休んで」
そう言うとLeoは今度こそ満足そうな顔で帰っていった
部屋に戻るとYutoはすとん、と床に座り込む
一晩で、空気の温度が何度も変わった。
ーー最後の温度はほわりと香る甘さで俺の胸をいっぱいにしていた。
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