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第5話 「味のする、味」
「P’Milan……?」
Yutoが、少し心配そうにこちらを見る。
「なんでもない」
そう言って、視線を逸らした。
「そう? じゃあ、座って。P’Milanの分も用意するから」
この部屋を用意してくれたお礼だと言って、
Yutoは椅子を引く。
Milanは何も言わず、促されるまま腰を下ろした。
しばらくして、
皿が二つ、テーブルに並ぶ。
「どうぞ」
「…ありがとう」
一口。
米は柔らかく、
鶏は、驚くほど静かな味がした。
「……うまい」
「ふふっ。よかった
隠し味はタレに梅酢を使ってるんですよ」
Milanは、もう一口、口に運ぶ。
ふっと笑みがこぼれる
「こんなに……うまかったんだな」
ぽつりと落ちた声。
「カオマンガイ、お好きなんじゃなかったんですか?」
Yutoが不思議そうに首を傾げる。
「……いや。なんでもない」
そう答えたとき、
視界が、わずかに滲んだ。
Yutoには気づかれないように、
Milanは静かに瞬きをする。
皿の上の湯気が、
まだ、消えずに残っていた。
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