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第7話 「此処にいる理由は」

「落ち着いた?」 「…ぅん」 「ふふっ可愛い」 「うるさぃ…」 「ねえ、Yuto」 呼ばれて、顔を上げる。 「これ」 差し出されたのは、 エメラルドのネックレスだった。 光は強くない。 でも、深い緑が、静かに目に残る。 「え……?」 「持ってて」 軽い言い方。 でも、冗談じゃない。 「……そんな高そうなもん、もらえない」 反射的にそう言うと、 Leoは小さく笑った。 「今のYutoに、持っててほしい」 理由は言わない。 慰めとも、約束とも違う。 Yutoの手のひらに、 エメラルドが落ちる。 ひんやりしている。 でも、すぐに体温を帯びた。 「……返すからな」 精一杯の抵抗。 「いいよ」 Leoは肩をすくめる。 「返したくなったら」 その言い方が、 逆に逃げ道を塞いでいる。 「今は、持ってて」 Yutoは、 ネックレスを握りしめたまま、動けなかった。 首にかけてもらうわけでもない。 でも、手放すこともできない。 ただ、 選んだという事実だけが残る。 ——ああ。 分かってしまう。 これは、 慰めじゃない。 守る、でもない。 「ここにいていい」って渡されるものだ。 「……ずるい」 ぽつりと零す。 Leoは、 何も言わずに笑った。 それ以上、触れない。 でも、離れない。 Yutoは、 エメラルドを胸元に押し当てる。 父の鍵とは、違う重さ。 逃げるためのものじゃない。 背負うためでもない。 ——選ばれた証みたいに。 この瞬間、 もう戻れないと、はっきりと分かった。

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