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最終話 「滲ませて」

「Takashima Yutoさんですね 私こういうものです」 背後から声をかけられ、足が止まる。 見せられたのは警察ID 「少し、お話を聞かせてください」 言い方は丁寧だった。 でも、選択肢はない。 「重要参考人、という形になります」 その言葉で、胸の奥が冷える。 理由は、聞かされない。 案内されたのは、港の隣にある小さな建物。 あるのは、机と椅子。 窓は開いているのに、 空気が動かない。 「こちらへ」 椅子に座ろうとして、 ふと、視界の端に人影が入った。 ——あ。 同じ部屋に、 すでに誰かが立っている。 背中。 見覚えがある。 ゆっくり、振り返る。 目が合った。 Milanだった。 何も言わない。 表情も、変わらない。 ただ、 そこにいる。 「……」 声が出ない。 他の刑事が、 淡々と話し始める。 「あなたの父親名義の土地についてですが——」 言葉は聞こえる。 意味も分かる。 でも、 Yutoの視線は、 Milanから離れなかった。 Milanは、 一度だけ、視線を落とした。 それだけ。

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