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玄愛2《雅鷹side》4
「またセミナー!?」
ラブラブも束の間、また予定を合わせていた日にセミナーが入った。
「俺との約束の方が先じゃん!」
「このセミナーはこの日しかないんだ。別にその日は記念日でも何でもないだろ?終わってからも会える」
「もういい!知らない!哀沢くんのバカっ!」
俺はムカついた。
だって俺を愛してるんでしょ?
ならセミナーなんかより俺でしょ?
約束が先じゃないの?
あーーーー、もう、ムカつくっ!
せっかくの土曜日デートだったのに。
セミナー?
「あ!篠原くん!」
「山田くん、どうしたの?」
「しばらく仲良くして!」
「いいよ」
篠原くんと仲良くしつつ、『別れる』とSMSでメッセージを送って1週間哀沢くんを避けてみた。
「山田」
「篠原くーん!行こ!」
謝ってくるまで絶対に許さないんだからっ。
ただ謝るだけじゃダメだよ。
俺の好きな高級スイーツを買ってきて、「雅鷹、あーん」「雅鷹、愛してる」ってやってくれるまで許さないんだから!
「山田」
山田じゃなくて雅鷹!!!
「しつこい!もう別れるって言ったでしょ!」
謝りもせずに俺の腕を掴んで何を言おうとしてるの?
俺は哀沢くんの手を振り払って午後の講義サボって途中で帰宅した。
俺が家に帰ってソファーで休んでいると、何度も着信が入っていたけど俺は無視して仮眠をとることにした。
夢の中でも怒っている俺。
そんな俺を見て無表情で見つめる哀沢くん。
現実でも夢でも変わらない関係性が何とも腹立つ。
そう思っているとスマホの着信音が止まらず鳴り続けていることに気づいて、寝ぼけながら相手を確認すると哀沢くんの弟のハルカちゃんだった。
「ハルカちゃん…どうしたの?」
ハルカちゃんがこんなに着信を鳴らすなんて珍しい。
『マサくん!やっと繋がった。兄貴が大学内で自転車とぶつかって倒れて病院にいる』
「は?え?どこの病院!?哀沢くん大丈夫?」
生きてる?
ちゃんと生きてるよね?
俺は病院を聞き出し、哀沢くんのいる病室へと向かった。
病室に入るとそこにはハルカちゃんと、高校からの同級生の愁ちゃんがいた。
「哀沢くん!大丈夫!?」
あぁ…頭に包帯巻いてまるで昔の俺を思い出す。
「あ!マサくん。兄貴、マサくん来たよ。さすがに分かるよね?」
ハルカちゃんが指を差した先にいる俺をしばらく見つめてから、哀沢くんが口を開いた。
「―……誰?」
「ちょ…何の冗談?」
思いもよらない一言を発した哀沢くんに、俺は苦笑いして言った。
俺が怒り過ぎたから、だからそんな冗談を言ったのかな?
「マサくんはダメなんだ…。マサくん、兄貴ちょっとした記憶障害みたいで俺と姉貴のことも最初分かってなかったんだ。今は思い出したけど。しばらくすれば思い出すと思うよ」
「記憶障害…?」
「兄貴、マサくんだよ。山田雅鷹くん。兄貴の恋人」
「恋人?」
嘘だよね?
俺のこと忘れたなんて。
すぐ思い出すよね?
「やだなぁいつもみたいに呼んでよ!雅鷹って♡」
「雅鷹…」
「また来るね!今日はゆっくり休んで」
そう言って愁ちゃんと病室を後にした。
「哀沢、俺のことは覚えていたんだ。1時間ぐらいして、徐々に家族を思い出していった」
大学内にある坂でスピードを出していた学生と哀沢くんがぶつかって、頭を打ったのが原因らしい。
愁ちゃんが一緒に救急車に乗ってくれて、病院に連れてきたみたい。
哀沢くんのお姉さん、お母さん、ハルカちゃんが来たけど最初は家族のことを思い出せなかったって。
「だから山田のこともすぐ思い出すと思う。そんな悲しい顔するな」
「そうだよね。俺、毎日お見舞い行く!」
俺は甘く見ていた。
哀沢くんがすぐに記憶を取り戻すだろうって思いこんでた。
お見舞い2日目ー
「哀沢くん、体調どぉ?フルーツ持ってきたよ」
本当はパフェがよかったんだろうけど、さすがに病人だからね。
この俺が最高級のシャインマスカットを持ってきたんだ。
俺がシャインマスカットをお皿に取り分けている途中で、哀沢くんが口を開く。
「俺たち、別れたんじゃないのか?」
あぁ、確かに最後に哀沢くんに連絡したのは『別れる』だった。
それを覚えてるってことは…
「もしかして、思い出したの?」
「いや、スマホの履歴見た。」
俺は怒ってたけど、でももうそんなことはどうでもいいから早く思い出して!って言おうとした瞬間…
「見舞い来なくていい。別れようとしたやつの見舞いとか来たくねぇだろ?今回ケガしたのも雅鷹のせいじゃねぇし」
雅鷹…
「もう退院するし」
あんなに雅鷹って呼んで欲しかったのに、全然嬉しくない…
「ちーっす炯。大丈夫?」
「アヤちゃん」
俺が悲しんでいると、高校の同級生のアヤちゃんが病室に現れた。
「綾」
「おー、俺のことは覚えてんだ。雅鷹のことは思い出した?」
「いや、まだ…」
どうしてアヤちゃんのことと愁ちゃんのことは覚えてるのに、俺のことは覚えてないの?
俺は中学からの友達で、アヤちゃんたちは高校からの友達なのに。
俺は恋人なのに。
一緒にいる時間は俺の方が長いのに。
なんで、なんで、なんで、なんで、なんでー…
「まぁそのうち思い出すだろ。1ヶ月後にみんなで温泉旅行なんだから、それまでに思い出せよ!」
「温泉旅行…?」
アヤちゃんの舞台が落ち着いて、オフシーズンになったら行こうと半年前に決めた温泉旅行。
久しぶりに、アヤちゃんと、愁ちゃんと、哀沢くんと一緒に出掛ける。
「さすがに1ヶ月ありゃ雅鷹とのこと思い出すだろ」
すごく楽しみにしてたのに、こんなことになるなんて…
でも、でも、でも!
思い出してもらえればいいんだもんね!
俺は諦めないぞ!
絶対に俺とのこと全部思い出してもらうんだ。
【to be continued】
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