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第三話 全部さらけ出して②
「……ロメルさん」
昼休憩中の管理人室。瓶の中身が空になったと言い、ソファに座っていたおれのチンコをしゃぶっていたジュードさんが静かに名前を呼んだ。
「どうしました……?」
「最近、オレの前以外でザーメン出してるよね?」
「えっ……? なんで……」
「においでわかるんだよねー。夜は甘い匂いを強く発してるのに、朝になると消えてる。ザーメンも少し薄い味だし」
他人の精のにおいを嗅ぎとることができる淫魔族だからこその指摘をされてしまい、おれは頷いて肯定した。中身が注がれた瓶の蓋を閉めテーブルに置き、ジュードさんが服を整えてくれる。別に悪いことをしたわけじゃないのに、どこか後ろめたい気持ちになる。
昨晩もおれはジュードさんへの溢れる想いを発散すべく励んでしまった。
昨日、物置部屋で備品整理をしていたら、こっそりと部屋に入ってきたジュードさんに後ろから抱きしめられたのだ。いたずら成功、と囁く彼の吐息に、別の意味でドキドキしてしまった。夜に自室のベッドに入り、背中に感じたぬくもりを必死で思い出しながら自らを慰めたのだ。それはそれは捗った。
それに、昨日一緒に夕食を食べたときはおれのザーメンが入った瓶の中身はまだ結構残っていたのだ。だからまさか今日、しかも昼間に絞られるなんて思っていなかったというのもある。縮こまるおれの隣にジュードさんが腰を下ろす。顔を上げると、こちらを見つめていた彼と目が合った。なぜだか少し怒っているような気がする。
「ロメルさん、なにかあった? 娼婦にハマったとか……もしかして、恋人ができたとか……」
「いえ、まさか! その……ちょっと、オナニーを、ですね……」
恥ずかしかったけど、嘘はつけない。しどろもどろになっていると、ジュードさんは目を細めた。
「オナニーするくらいならオレのところに来てよ。ロメルさん、オレの手と口大好きでしょー?」
「あ、えっと……」
好きなのは手と口だけじゃない、あなたのことが好きだ、なんて言えるわけもなく。どうしようかと頭を捻ってなんとか言い訳を絞り出した。
「おれ……ちょっと、アナニーにもハマってまして……」
「……お尻? なんで……もしかして、誰かに教えられて……」
「ないですないです! 小説で読んでて、気持ちいいのかなって、試してみたくて……その、恥ずかしくて、誰にも言えないし……」
さすがに苦しすぎる気はした。ジュードさんはしばらくこちらを訝しげに見つめて、ため息をついた。
「……そっか。ロメルさん、好きだもんねー。いやらしい小説」
「はい……」
苦し紛れの言い訳を彼は信じてくれたようだ。それもそうだ。以前なぜ食ザーに興味を持ったかと聞かれて、おれはコレクションのエロ小説たちのことを話していたから。小説を読んで尻穴で気持ちよくなれることを知ったのだから、一応嘘というわけでもない。
苦笑いしていると、ジュードさんがずいと顔を近づけてきた。きれいな顔が視界いっぱいに広がって、心臓が跳ねる。形のいい唇が、にやりと弧を描いた。
「……ねー。オレが弄ってあげよーか?」
「えっ」
夢みたいな提案に、目をぱちくりとさせて固まってしまう。彼のすべすべの手を撫でられる。
「ロメルさんのお尻、好きなだけ弄ってあげるから。ムラムラしたらオレのとこに来てね?」
「い、いいんですか……?」
「もちろん。それに……興味があるなら、おちんぽも挿れてあげるよ?」
ごくり、と無意識に唾を飲み込む。これは本当に夢じゃないのか、そう思って撫でられていない方の頬を抓った。うん、夢や妄想じゃない。
「なにしてるのー?」
くすくす笑って、おれが抓った頬も優しく撫でてくれる。彼にとっては、ザーメンを絞れるならセックスだって気軽にできるのかもしれない。ジュードさんは淫魔の血を引いているから。そう思うと少しだけ胸が痛むけど、それよりも彼に抱かれることができる嬉しさの方が何倍も強い。今を逃せば二度とこないであろう機会だ。断れるわけがない。
両手で頬を包まれ、キスできそうな距離にいるジュードさんの目をしっかりと見つめて、口を開いた。
「ジュードさん。お願い、します……! おれの尻穴弄って……チンコ、挿れてください……♡」
「……うん。いいよー」
ジュードさんの顔がさらに近づいてくる。思わず目を瞑れば、鼻にちゅ、と柔らかな唇が触れた。目を開けると、至近距離で美しい顔がいたずらっぽく微笑む。
「今日は夜に予定があるんだ。ごめんねー。明日でもいい?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、今日はオナニー禁止ねー。いっぱいザーメン溜めておいてねー。オレも準備しておくから」
「わかり、ました……♡」
返事をしながらも、股間が膨らんでくる。そんなおれに笑いかけながら体を離したジュードさんは、立ち上がる直前――頬に軽くキスをしてきた。
早く明日になってほしい。そう思いながら仕事に戻った。
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