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第5話

自覚してしまえばそれはあっという間だ。 こいつがすること全部がかわいく思えて、 上がる口角を止めることも忘れた。 弱々しく泣く黒木をぎゅーっと抱きしめて、肩口に顔をすり寄せる。 「っ!なに、なにすんのっ…」 これでビクッて…あーかわいい。 「俺、お前の為ならなんだって出来そう…」 「は、はあっ!?」 「どうしよう…思ってたより好きだわ…」 「!」 「?…なんか言えよ、恥ずかしいだろ」 「いや、だって…そんなこと言ってもらえるとか、思ってなかったし…予想外過ぎて、どうしたらいいのかわかんない…」 顔を真っ赤にさせて一生懸命俺から目を背けようとするこいつに、笑いを堪え切れなくなった。 「……ふっ!あははっ!」 「わっ、笑うな!」 「ごめんごめんっ、俺だって予想外だよ。黒木がこんなに照れ屋さんとは。」 「うるさいなあ…ってあれ!?」 「ん?」 「彼女!彼女は!?」 「ああ、別れた。」 「なんで!?」 「好きな人ができたから?」 「っ!…くっそぉ…ずるいよ…」 「なにが?」 「なんでもないっ!」 「?」 「もうっ…」 「つうかさあ、抱きしめ返してくんねえの?」 「へっ」 「恋人なんだから、腕は身体の前じゃなくて、俺の背中。」 「恋人…」 「なに、嫌?」 「そんなわけない!…は、恥ずかしいんだよ」 「!」 「今まで好きな人とこんな風になったことないし…」 好きな人…言われるとこんな嬉しいもんか。 「仕方ないなー」 シャイボーイには悪いが、無理矢理手を俺の背中に持っていった。 「ちょっ…逢坂っ」 もっと嫌がられると思ったけど、手はずっと俺の背中にあって、服をぎゅっと握ったのが分かった。 改めて、こいつの身体ちっちゃいな。と思う。 なにも、抱きしめるだけで目を瞑ることなんてないのに、どんだけ緊張してんだ。 あぶね、笑ったらまた怒られる。 かわいいな…キスしたい。だめかな。 いきなり口は可哀想かと思って、でも我慢出来なくて、顔を埋めた首元にちゅっとキスをした。 「!?」 予想通り顔を真っ赤にした黒木が首元を手で抑えて目をキョロキョロさせる なんてピュアな反応… 「嫌じゃない?俺にこういうことされんの。」 ブンブンと首を横に振ると、 更に顔を赤くさせた 「…う、嬉しい。」 うわー!なんだこの生き物!かわい過ぎか! なんで今まで気づかなかったんだ! 「はあ…元カノに感謝だなー」 「それ今言う…?」 「だってさ、俺が彼女作らなかったら黒木が好きって言ってくれることもなかったかもしんないじゃん」 「ま、まあ…」 「こんなかわいい黒木を知らずに大学卒業してたかもと思ったら、恐ろしいな。」 「かわいいとか…ほんとやめて。反応に困る…」 「耳真っ赤だし、わざわざ反応しなくてもそれ見ればどう思ってるかわかるから。」 「うぐぐ…見んなっ!」 「無理でーす。」 「ばか!」 「おまえ…ばかって、小学生じゃないんだから…」 「ばーか!」 「…こんにゃろ!」

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