3 / 7

第1話 春(2)

 路線バスは終点「星室学園前」で停車した。バスの扉が開くと、緒田たちの他に、大きな荷物を抱えて降りる新入生らしき客が複数人いた。さすがスポーツ強豪校だけあって、皆、背筋がよく、体格がガッシリして、そしてどこか大人びていた。  バス停を降りてすぐの「バスターミナル」には、乗客用の待合スペースのほかに、小規模のスーパーやホームセンターなどが入居している。学生たちは必要最低限の生活用品などはここで仕入れるのだと、入学案内に書かれてあった。  ターミナル前のロータリーに、車が何台か停まっていた。  運転席からジャージ姿の大人の男性たちが下りてきて、「○○寮の新入生はこちらへ」とそれぞれ大声で呼びかけた。どうやら、寮までの送迎車のようだ。学生たちが、呼ばれたほうへと吸い寄せられていく。しかし、緒田たちの<青葉寮>は一向に呼ばれることがなかった。 ーーー 「くそ、おっせえなぁ」 牧瀬が首をのけぞり、待合室の天井を仰ぎながらぼやいた。 「ホントだねえ」 隣で緒田も同調する。二人はかれこれ、三十分以上は送迎が来るのを待っていた。  自分たちで歩くぞ!と牧瀬が提案し、二人は出発することにした。  学園のキャンパスは、想像以上に広大だった。ターミナルを出て、いくつものグラウンドや体育館を目にした。そして春休みの午後だというのに、どの運動施設も、部活動が活発に行われている。四方八方から、様々な運動部の男子生徒たちの掛け声が聞こえてくる。  「マジで男しかいねえな・・・」  牧瀬が、がっくりと肩を落とした。確かに、二人がキャンパスですれ違う学生たちは、当たり前だが全員男だった。  道中、すれ違う在校生たちに道を尋ねながら、二人は青葉寮を目指した。これは送迎車が付くはずだ。歩いても歩いても、寮に辿りつかない。そのうち、人気(ひとけ)のない森で、二人は迷ってしまった。 「疲れた・・・」 緒田は運動不足がたたり、歩き疲れて、呼吸が乱れてきた。二人は近くのベンチで休憩することにした。牧瀬は、ふと立ち上がった。 「よし、お前ここで待ってろ。俺が走って見つけてきて、すぐに迎え呼んでやるから。な?」 牧瀬はそう言って、緒田に自分の荷物を預け、捜索に向けて靴紐を結びなおし始めた。その男らしく頼もしい姿に、緒田はキュンとした。  その時、緒田がすぐ近くに、「  寮通用口」と書かれた看板を見つけた。 寮の名前は掠れて読めないが、とにかく二人はその看板に従って歩いてみることにした。  茂みの奥に、建物を見つけた。建物の形状的に学生寮のようで、勝手口のような扉が開いている。ここが青葉寮かもしれない。二人はそっと、建物の中に入った。 「うっ・・・」  建物に入って少し奥に入ると、なんとも言えない香りが二人を襲った。男くさい、部室のような汗ばんだ香りが、建物内に充満していた。男子寮って、こんな感じなのか?二人は怖くなった。  牧瀬は廊下にトイレを見つけると、ちょっとションベンしてくるから待ってろ、と入っていった。緒田は、親友を待ちながら、先ほどの牧瀬の頼れる姿を思い出し、頬を赤らめた。 (さっきの想太、ほんとかっこよかったな・・・) 牧瀬の姿を思い浮かべた緒田は、自らの股間が熱くなっていくのを感じた。歩き疲れてしまったからだろうか。それとも、男子寮特有の、雄々しくなまめかしい香りにあてられてしまったからだろうか。緒田の陰茎が、牧瀬のことを思えば思うほど、どんどん膨らんでいく・・・。  その時だった。  「んっ・・・」  どこからともなく、誰かの声がした。緒田は驚いて、耳を澄ませる。  「ああっ・・・だめ・・・・」  あたりを見渡すと、少し離れた場所に「洗濯室」という部屋があり、明かりがついていた。扉は半開きになっている。どうやら声は、そこから聞こえてきているようだった。  緒田は、おそるおそる、その部屋の中を、ドアの隙間から覗いてみた。  そして緒田は、部屋の中の光景に驚愕した。若い男子二人が、激しく愛しあっていたのである。

ともだちにシェアしよう!