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第8話 岩永警視正の名刺。
警察官巡査の仕事は終わったため、宗近の介抱もなく小川と二人で警視庁に戻った。
「警視庁のキャリア組の方達は思っていたよりも冷たいんですね」
「本庁の奴らは雑務で手一杯だろう。俺達だけで直ぐに病院に向かうから、大人しくしてろよ」
さすがに労災が降りるらしく、小川と宗近は乗ってきた警察署のパトカーを借りて緊急で病院に行くことにした。
一つの事件が解決したのだ、警視庁の者は忙しそうに後片付けに追われているが、ただ応援に駆けつけた若手の巡査達は宗近達よりも早く帰宅したようだ。
とりあえず防弾ベストのおかげで殉職しなくて済んだ宗近は、ポスターと撃たれた腹を抱えてパトカーに乗り込もうとしたときのことだった。
「丸石!!」
慌ただしい警視庁の出入り口から岩永の姿があった。
「……岩永警視正?」
「君が至近距離から撃たれたと聞いた。……大丈夫か?」
まさか一介の巡査に警視正が心配してくれているのか、と宗近の心が熱くなるのを感じた。
やはり岩永警視正 に自分のいいところを見せたい、本当ならのたうち回りたいほどの激痛を堪えて宗近は平気なふりをした。
「大丈夫です」
「大丈夫なはずがないだろう?!まったく、……丸石早く乗れ、病院に向かうぞ」
小川に突っ込まれ、仕方なく宗近はパトカーに乗り込む。
「丸石、君のおかげで今日大事件が一つ解決した。これは私の名刺だ、怪我が落ち着いたら礼をさせてくれ」
宗近は震える手でその名刺を受け取ると、感無量過ぎて言葉が一切出てこなかった。
そんな彼を置いて岩永は警視庁に戻っていった。
やはり岩永は小川が言ったような性格の人間には感じられず、ポスターのように正しく清らかな美人警察官だなと心の芯が熱くなる。
そういやスーツ姿の岩永警視正もエッチだな、と心の中はやましさで一杯だった。
「あぁ~、丸石。……とんでもない奴に気に入られたなぁ」
小川はパトカーを運転しながら、後悔の言葉を漏らした。
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