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第13話 岩永警視正のコレ。
岩永は乗ってきた車は覆面パトカーではなく、自前のものだった。
「まさかこんな短期間で復帰しているとは思っていなくて、ヤマさんから聞いて驚いたよ。やはり無理をさせていたんだな……」
まさか岩永の愛車に自分が乗る機会があると思ってはいなかった宗近は、車内に充満する空気を味わっていた。
それでもさすがに何も話さないわけにも行かず、宗近は恐る恐る言葉を発した。
「岩永警視正、自分のせいで仕事を早退させてしまってすみません」
「僕は今日休みだったんだ。丸石の様子が気になってね、つい押し掛けてしまった、迷惑だったかな」
「心配してくれてありがとうございます」
岩永の貴重な休みを自分のために使わせてしまったのかと、宗近は胸が痛くなってしまった。
しかしそれと同時に、自らの休みを使ってまで心配をしてくれたのだと、嬉しくもあった。
こんなにも優しい岩永に感動していた宗近のサイドシートに何かが転がってきたことに気付いた。
「?!」
転がってきたのは大きめのディルドだった。
見間違いかと目を擦ってから、そのモノに恐る恐る触れたが、間違いなくディルドだった。
何故こんなモノが岩永の愛車にと疑問と同時に不安に駆られる。
「あの……、岩永警視正。……コレ」
バッグミラーに映った岩永はニコリと微笑んでいた。
「あれ?仕舞ったと思ってたけど、出てたのか。シートに挟まってたのかなぁ」
その言葉の後に、鍵が掛かる音が宗近の頭の中で響き渡る。
『まさか小川巡査部長の言ってたことはコレなのか?!』、と、心の中で叫びを上げるが、怯え過ぎていた宗近は声を上げることができなかった。
「でもさすがに怪我人を襲うことはしないから安心して。でも治ったら、容赦しないけど」
バックミラーに映る岩永の表情は、獲物を見付けた雄の顔だった。
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