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第19話 滅相もないです。

 勤務が終わり宗近は着替えるためにロッカールームに向うと、そこには岩永の姿があった。 「君を迎えに来た。さて、今日も病院に送っていくよ」  さすがに今日の岩永は仕事だっただろう。 「自分のせいで早退させてしまってすみません」  今日も丸石 宗近は謝った。 「気にするな。それよりも体調は大丈夫か?」  『気にするな』、と、そう優しく言われているのに何故か岩永の目が笑っていないことに気付き、自分は何かやらかしてしまったのかと不安に駆られた。  『密室に行ったら殺される?……もしかして襲われるのではっ?!誰か助けてくれ……!!』と心の中で叫んでいたが、どうしても死んでる表情筋はこんなときに役にも立つことはなかった。 「体調は大丈夫です、お気遣いなく……」 「そうか、それはよかった。なら丁度いい、今晩丸石に付き合ってもらいたい所があるんだが、いいか?」  優しそうな笑顔なのに、目は笑っていない岩永に恐怖しつつ、宗近は聞いてみた。 「自分はどこに付き合えばいいんですか?」 「何って、一緒に食事でもどうかと思ってね」  本当に食事なのだろうか、もしかしたら付き合わせる口実かもしれないし、自分が食材にされるのかもしれない、と、そう思うと怖くて一人で行けそうもなかった。 「小川巡査部長も誘ってみませんか」  一人でなければ見のがしてくれるかもしれない、そう思い提案したが岩永の笑みは深くなり、目が更にきつくなった。 「僕と二人だけじゃ不服かな、丸石」 「……滅相もないです」  宗近はどうやら腹を括るしかないようだった。

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