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朝、目が覚めた瞬間、体が鉛のように重かった。
一晩中、貪りつくされるように犯されて、
何度もイかされて、ぐったりと眠りについたはずなのに、
まだ体中が熱くて、だるい。
ベッドから起き上がろうとしても、腰が抜けたみたいに力が入らない。
下腹部がじんわり疼いて、
昨夜の太い“それ”の感触が、鮮やかに蘇る。
(……講義、休もう……)
スマホを手に取って、教授に欠席の連絡を入れる。
体調不良、と嘘をつく。
本当は、体調なんかじゃなくて、
この部屋のせいだ。
夜の“それ”のせいだ。
ベッドに横たわったまま、ぼんやりと天井を見つめる。
ふと、視線が隣の部屋と隣接する壁に移った。
昨夜の壁叩きの音が、耳の奥に響く。
(隣の人……絶対に、気づいてる……)
あのドンッ、という音。
声が、壁越しに聞こえていたんだ。
変態だって、思われてる……
一人でベッドの上であんな声出して、
腰振って、喜んでるって……
(何か持って、謝りに行くべき……?
高級なお菓子とか……
どんな顔して、ドア開けたらいいんだ……?
「すみません、夜うるさくて……」って?
いや、絶対変だよ、そんなの……)
頭の中でぐるぐる回る。
もう引っ越そうかな……
この部屋、出て行こう。
でも、家賃月5,000円。
こんな破格の物件、他にない。
田舎から出てきたばかりの僕には、
この安さが命綱みたいなものだ。
引っ越したら、また高い家賃で苦しむ。
バイト増やして、生活切り詰めて……
それに、この快楽を失うなんて……
(……快楽……?
待って、快楽……?)
ぞっとする。
怖いのに、疼きが止まらない。
体が、夜を待ってる。
そんなことを考えていると、インターホンが鳴った。
ピンポーン。
心臓が跳ね上がる。
(誰……? 隣の人……? 苦情に来た……?)
恐る恐るドアを開けると、そこにいたのは管理会社の社長だった。
いつもの優しげな笑顔。
スーツ姿で、穏やかに立っている。
「やあ、元気にしてる? 何か困ったことないかな?」
一瞬、胸がざわつく。
社長さん……もしかして、隣の部屋の人から苦情が来てる……?
この部屋の変なこと、知ってるのかな……?
「困った……こと……ですか……?」
声が震える。
(言おう……この部屋、なんか変なんですって……
僕があんな……喜ぶはずない……
えっと……夜になると、見えない何かに触られて……声が出ちゃって……隣に聞こえて……助けてください……)
恥ずかしくて、顔が熱くなる。
でも、確かにこの部屋は何かが変だ。
社長さんなら、解決してくれるかも……
でも、口を開いた瞬間――
「……大丈夫です……」
自分の声が、驚くほど平静だった。
(え……? なんで……?)
心の中で叫んでいるのに、言葉が出てこない。
社長の目が、穏やかで、でもどこか底知れない。
(言えない……言ったら、変な子だって思われる……それに……)
体が疼く。
夜の感覚を思い出して、下腹部が熱くなる。
「そうか。困ったことがあったら、いつでも連絡してね」
社長はにこりと笑って、去っていった。
ドアを閉めた瞬間、膝がガクガク震えて、その場にへたり込んだ。
(今……助けを求められたのに……自分で拒否した……)
涙がぽろぽろと落ちる。
(もう、逃げられない……僕は……)
夕方までベッドでうつろに過ごした。
体が熱くて、疼きが止まらない。
夜が来るのが、怖いのに待ち遠しい。
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