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第4話 地方公演

 舞台は見に行けないから、テレビドラマが始まると嬉しい。鷹尾さんの写真集も出たので気持ちが舞い上がっていた。  学校では嫌な噂が広まっていた。 「山下は変態! 変な特撮ヒーローの話ばかりするのよ。古いやつ。主演の萩原鷹尾のことばっかり。  ああいうのが好きなんだよ、ホモ?」 「あんな中年の俳優、どこがいいんだろう?」  特撮ヒーローものの人気が再燃して地方公演が組まれた。近所の文化会館にも1日だけショーが行われると言う情報が入ってきた。  ゲストとしてもちろんあの萩原鷹尾が出演すると言う。歴代の特撮ヒーロー勢揃い、と称して集まるそうだ。ヒーロー同窓会、と言うらしい。  俺は事務局に連絡した。 「公演のスタッフ、募集してませんか? 地元の人間も必要でしょ。」  同級生の親が文化会館に勤めているのを掴んだ。 「俺をスタッフに使ってください。 S高校の二年生です。娘さんと同級生です。」 学生証を見せた。 「当日の雑用係だったら、空きがあるかな。 S高ならよく知ってるよ。私はPTAの会長なんだよ。」 「いつもお世話になってます。」 (やったー。これで鷹尾さんのそばに行ける。近くで、お顔が見られる。)  当日は駐車場と会場整理だった。 ヒーローショーの会場は昔のポスターが飾られ、 ジャンガリオン一色だった。 「変身ダー!」 昔の動画が流されている。ポーズがカッコいい。真似して手を振り回していた。動画の鷹尾さんは何年経ってもかっこいいままだ。見惚れてボーッとしてしまった。  今日は嬉しくてかなり早く来た。始まるまでにまだ時間がある。 「おい、そこのスタッフ、地元の人かな? この辺で美味いラーメン屋教えてくれ。」  声をかけてきたのはあの鷹尾さんだ。 俺は足が震えた。本人だ。 「案内してくれよ。ご馳走するから。」  会館の人に声をかけて、出かける事になった。「鷹尾さんですよね。ずいぶん早くいらっしゃるんですね。」 「ああ、いつも、その町でラーメン屋を開拓するので早く来るんだよ。マネージャーとラーメン食うのが決まりなんだ。今日はマネージャーが遅くなるって言うからどうしようかと思ってたんだよ。土地勘もないし。」  思いがけずこんなラッキーな展開に、俺は一生分の幸運を使ってしまったか、と思った。

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