5 / 5

第5話 ラーメン

 俺は地元で評判の「極楽ラーメン」へ案内した。公演場所のこのTアリーナからも近い。 「豚骨ベースか? これを食ったら極楽に行けるのか?」  鷹尾さんはラーメンを食べる姿もカッコよくて、俺は味なんか分からなかった。 「俺のファンなの?」 「はい、小3からずっと好きです。 ジャンガリアン、改造人間ジャグ。 ずっと見てました。かっこいいです。」 「途中で死んじまうだろ?」 「ええ、あの時は泣きました。 なんで?他の仲間のティグとかが死んでも良かったのになんでジャグなの?って思いました。」 「酷いな,ティガーも人気あるんだぞ。」 「ジャグが死んで、俺学校休んじゃいました。」 「そりゃヤバいな。 PTAに有害番組だって言われちゃうんだぞ。」 「あ、ごめんなさい。 俺、大人になったらジャグと一緒に地球を救おうって思ってたんです。」 「ははは、一緒に救おう。」 鷹尾さんは肩を叩いて豪快に笑った。 「今日の公演は見るんだろ?歌も歌うよ。」 「はい、スタッフなんで会場整理です。 その合間に見ます。楽しみです。」  鷹尾さんは名刺をくれて、俺の携帯番号を聞いてきた。 「高校卒業したら東京に来るんだろ? 連絡くれればバイトとか紹介出来ると思うよ。」  そろそろ戻らないと。リハーサルがあるようだった。  ガシッと力強い握手をしてくれた。鷹尾さんは画面で見るより,背が高く身体が大きくて肩幅が広い。痩せているように見えるが筋肉質だ。  すごく男らしい人だった。ますます惚れる。 ほんの1日の出来事だった。夢のようだった。  会場には往年の特撮ヒーローファンが詰めかけてすごい熱気だ。  俺はこの日初めて実物を見たのだ。話をした。 夢のような時間だった。  見かけた鷹尾さんのスマホの待ち受け画面。 小さな女の子の写真。  とても可愛い2才くらいの少女。 「ああ、ウチの姫だよ。長女の舞だ。 可愛いだろ。長女と言っても子供はまだ,この子一人だけど。」  嬉しそうに見せてくれた。  相変わらず俺は妄想の中でストーリーを作って鷹尾さんを動かしていた。俺の物語の中では、 俺の思い通りの言葉をくれる鷹尾さん。  彼はいろんなドラマに出ている。届かない人だ。心の中だけで恋人になる。  妄想が激しくなっていた。

ともだちにシェアしよう!