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第7話 鷹尾さんの住まい

 鷹尾さんは自宅に訪ねて来い、と言ってくれた。一人で来るのは初めての東京だった。 「下北沢、か。 芸術家の町って感じだな。 鷹尾さんはここに住んでるのか?」  探しながら住宅地の方へ歩いた。ごちゃごちゃした民家が密集している。3階建ての小綺麗なマンションだった。憧れの萩原鷹尾の住まいだ。 緊張する。震える指でエントランスのキーナンバーを押した。インターフォンで応答があり、ガラス扉が開いた。 「3階だよ。301号室。上がってきて。」  聞こえた通りにエレベーターで3階に上がった。 (東京のマンションってクソめんどくさいな。)  ドアのベルを鳴らした。 いきなりドアが開けられて、鷹尾さん本人が顔を出した。 「よく来たね。まあ、入れよ。」 (あ、あ、本物だ。鷹尾さんだ。)  部屋に入ったら手を差し伸べられた。戸惑いながら握手した。ソファに腰かけて珈琲をいただく。 「おいしいです。」 「珈琲にはこだわりがあるんだよ。」  笑った顔が画面で知ってる鷹尾さんだった。 「どうした?」 「卒業して、プーになってしまって。」 「ああ、バイト紹介するって言ったっけ。」 「この前は変なタイミングで電話しちゃってすみませんでした。」 「いや、こっちが失礼したね。」  女の人といる所を邪魔してしまった。 「ここは鷹尾さん、一人で住んでるんですか?」  立ち入った事を聞いてしまったか? 本当は俺、行く所がない。帰りの事を全く考えていなかった。  大学に落ちて親は浪人しても大学に行け、と言ったが、逆らってあてもないのにここに来た。  親とケンカして出て来てしまった。 「そうか、住む所ないのか? じゃあ俺の付き人やるか?ここに住んで。」 「え?いいんですか?」 あまりにも簡単に決まった。  事情を知って体裁を整えてくれた。この人は誰にでもこんなに親切なのだろうか。 「俺の会社、ハギーコーポレーションに入社するって事でどうだ? 給料は安いけどな。部屋も余ってるし。」  電話で親に話してくれた。あっけない感じだった。

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