19 / 31

第19話 リアルヤクザ

 千尋さんは、鷹尾さんの頬を思い切りひっぱたいた。 「パシーンッ!」  いい音がした方を見た。鷹尾さんが頬を押さえている。 「痛てぇな!気の強い奥さんだ。 失礼したね。許してくれるかい?」 「いいえ、許しません。 ウチの人に報告します。 ウチの人はきっと許さないわ。」 「仕方ないね。どうしろと言われるかな?」  まるでヤクザ映画のようなやり取りだ。 そこに道具を抱えて彫武さんが入って来た。  千尋さんが何かを言う前に鷹尾さんが口を開いた。 「奥さんに一目惚れです。 我慢できずにくちづけしてしまいました。 許さない、と叱られた所です。」  彫武さんは千尋さんの肩を抱き寄せてこちらを見た。 「さすが、萩原鷹尾さん。 ウチの奴はいい女でしょ。 でも、譲りませんよ。 命をかけて一緒になった女房ですから。」  すごい貫禄で彫武さんはこちらを見て笑った。 そして近づいて来ると、思い切り鷹尾さんをぶん殴った。鷹尾さんは吹っ飛んだ。 「痛てえなぁ。」  顎を押さえて 「今日は殴られ日和だ。」 「当たり前です。不埒なことをしたのですから。」  千尋さんに冷たく言われた。 「まだ、明日も仕事が残ってますから、よろしくたのむ。」  鷹尾さんの声を後に、二人仲良く帰って行った。 「正樹、どう思う?」 「リアルヤクザみたいでした。 カッコよかった。」 「武はある意味,ヤクザみたいなモノだよ。 日本全国のヤクザが武の墨を入れたがる。  入れるなら武にぜひ!って言うヤクザがたくさんいて予約が取れない彫り師と言われている。 顔の広さは半端ないな。」 「これからの仕事に差し支える事は控えてください。それに俺、やきもち妬きですから。」  俺の言葉に鷹尾さんは、笑ってポンポンと頭を叩いた。 「帰ろう。」 「北山修子さんがハイアットホテルで待ってるって言ってましたけど。」 「いいんだ。女を抱く気になれない。」  鷹尾さんは、自分に燻っている欲望を俺にぶつけてきた。 「女を壊す訳にはいかないからな。」  俺は乱暴に抱かれた。

ともだちにシェアしよう!