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第20話 修正

 俺は当て馬のように鷹尾さんに抱かれた。 タトゥーが落ちないように気をつけてしがみついた。気をつけていても、激しい鷹尾さんのセックスに我を忘れた。 「ああ、もう死んじゃう。」  鷹尾さんも俺もいつもより興奮していたと思う。めくるめく快感に気を失うように眠った。  朝、一緒に風呂に入って丁寧に洗ってくれた。俺はタトゥーが消えてないか、気になった。  身体をくまなく確認したい。 「あんまり見るなよ。照れるだろ。」  トーストの軽い朝食を摂ってスタジオに出かけた。  今日は濡れ場に女を追ってヤクザが踏み込み、鷹尾さんがドスで切りまくる、というシーンだった。タトゥーが血糊で汚れる。  傍に千尋さんが絵の具を用意して控えている。 鷹尾さんは目を合わせない。千尋さんが寂しそうに見えるのは気のせいか?  画材の調合に余念がない。 「パンッパンッ!」  盛大に銃で撃たれて仕込んでいた血糊が飛び散る。ここで死ぬ話だったか?  いや、何度でも立ち上がる。あの特撮ヒーローのように不死身だ。  長ドスを持って立ち上がり、敵を滅多刺しに斬り殺す。さすが、殺陣を厳しく修業した鷹尾さんの太刀筋は見事だった。周りの殺陣師の上手さもあるだろう。  どんな女でも惚れる。そして、どんな男でも。 男が惚れる男だ。役者だからそう見せるのか、 鷹尾さんの持っている資質なのか。  俺は鷹尾さんの演技に引き込まれる。 「ふうっ。」  終わって思わず息を吐く。息を止めていたのに気づかなかった。 (こんなすごい人が俺を抱いてくれる。 それだけでいい。ジェラシーなんてとんでもない。独り占め出来る人じゃないんだ。)  また、明日も撮影が残っている。今日は血糊をたくさん浴びたから拭き取るとタトゥーが消える。千尋さんが付きっきりで修正している。  楽屋の畳の上で覆い被さるように絵を描いている千尋さんがいた。 「眠ってるようです。 今度は前側を描き足したいのですが。」  胸の部分を描き足すのだと言う。手を貸して欲しいと言われて鷹尾さんの身体を仰向けにした。  下帯だけの鷹尾さんの身体はすごくセクシーだった。 「うーん、寝ちまったな。」  千尋さんの手が面相筆を細かく動かしている。 「くすぐったいな。 なんだ、正樹は見張ってるのか?」 「そう言う訳じゃないよ。」  実はマネージャーにきつく言われている。 鷹尾さんが手を出さないように。

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