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第22話 贅沢
「正樹は贅沢だな。俺は海に憧れる。
東京の海は綺麗じゃないから。」
東京育ちの鷹尾さんは、どこまでも続く海岸線がカッコいいと言う。
車から降りて歩いた。道路から見えない海は綺麗だった。
「子供の頃、海鳴りが聞こえるのは好きでした。
海の音がするのに海が見えない。」
ザザーン、と遠くに聞こえる海鳴りは想像力をかき立てる。
ビーチラインと称する幹線道路からは海が見えない。もっと一ノ宮の方に行けば見えるかもしれない。地形の問題だと思う。高低差があれば景色がいいはずだ。そうまでして見たい海でもない。
勝浦方面に来た。
「担々麺食べますか?有名らしいけど。
勝浦より美味い担々麺の店が大網にありますよ。」
そこに戻って案内したが、もう店は無くなっていた。
「残念だな。極楽ラーメンでもいいぞ。」
鷹尾さんは初めて会った時の事を覚えていた。
あれからまだ一年も経っていないのに昔の事のように感じた。
Tアリーナを越えて行くとまだ極楽ラーメンはあった。二人で辛いラーメンを食べた。
「豚骨醤油の激辛。美味いな。」
辛さのせいかジワーッと心が熱くなった。
撮影のある時は気が立っているのか、激しいセックスを求めてくる鷹尾さんだが、今はそう言う雰囲気ではない。
「おまえ、あの台本読んでただろ。
どう思った?」
「ええ、何だかロマンチックなドラマですね。」
「静かな男の話だ。
俺の中にいるかな、そんな奴。」
鷹尾さんはお芝居をそんな風に引き出すんだ。
自分の内面を探して。
それはつらい事だと思った。自分の中になかったら新たに作り出すのか?
さまざまな人間を必要に応じて構築して行く。
役者って大変な仕事だ。
新作にはほとんどセリフがない。
間、のドラマだった。
「無駄なおしゃべりは俺も嫌いだが
言葉で語れないと難しいな。」
俺を見つめる。俺が練習台か?
「大切なものが壊れたら、正樹ならどうする?」
「え、と、泣きます。泣き喚く。
それと壊した自分に怒りますね。」
ジッと見つめられた。
「正樹は俺が壊れたら、泣くのか?」
「え?壊れるって、どんな風に?」
それは粉々になって二度と戻らないって事なのか?
俺は鷹尾さんの言いたい事がわからなかった。
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