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第24話 無口な男
鷹尾さんがまた新しい人格を見出しているようだ。髪が伸びて肩に当たっている。
綺麗な顔。綺麗な顎の線。飛びつきたいけど我慢する。今度の役は性欲ギンギンじゃない。俺が求めてはいけないだろう。
千葉の古民家でのロケが多くなった。美大でのロケもある。
ーー企画展を見に大学に行った。憧れていた美大だ。譲たちに案内してもらう。
「資料館に椅子の展示があるんだ。
莉央の好きなイームズチェアもあるよ。」
芽瑠も
「本物欲しいよね。パクリの擬きは売ってるんだけど。」
企画展示室に莉央の絵も飾られていた。
何かの賞を取ったようで金のリボンが付いていた。
「入賞したんだ。」
「ホントだ、すごい。」
莉央はこう言うのが嫌だった。知らない奴が彼の作品に優劣を付ける。こんな不愉快な事はない。誰かよりは上手いが、誰かよりは劣る、って何だよ。だから莉央は誰にも見せないで,一人描き続けて来たのだ。
教授だと言う男が近づいて来た。
「沼田先生だよ。視覚伝達科の教授。
専門はダダイズム。」
譲に紹介された。
「君がこの絵の作者だって?」
莉央は黙って沼田という男を見つめた。ずっと黙っている。挨拶をする気もない。
「莉央・・」
芽瑠が心配そうに声を出す。
「先生すみません、彼は無口なんです。」
沼田も莉央をじっと見つめる。
「私のアトリエにいらっしゃい。
ゆっくり話を聞きたい。」ーー
「高校生から大学生の年令を演じるんですね。」
「そう、ちょっときついな。
すぐ実年令になるんだけどね。違う俳優に高校生だけやってもらおうか、っていう話もあったんだけど、監督が俺で行くって言うんだよ。
正樹は、どう思う?」
「ええ、鷹尾さんが嫌じゃなければそのままで。」
俺は若々しい鷹尾さんもいいなぁ、と思っていた。動きが若い。何だか可愛い、と思ってしまった。
ーー沼田教授は莉央に入れ込んでいる。
困った譲が
「先生、浅井はここの学生じゃないんです。」
「構わないよ。彼は天才だ。天才は滅多にいないんだ。この大学にもいないだろう。」
譲と芽瑠は、買い被りすぎだ、と思った。
「先生のヤバい噂を聞いたよ。」ーー
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