24 / 31

第24話 無口な男

 鷹尾さんがまた新しい人格を見出しているようだ。髪が伸びて肩に当たっている。  綺麗な顔。綺麗な顎の線。飛びつきたいけど我慢する。今度の役は性欲ギンギンじゃない。俺が求めてはいけないだろう。  千葉の古民家でのロケが多くなった。美大でのロケもある。 ーー企画展を見に大学に行った。憧れていた美大だ。譲たちに案内してもらう。 「資料館に椅子の展示があるんだ。 莉央の好きなイームズチェアもあるよ。」 芽瑠も 「本物欲しいよね。パクリの擬きは売ってるんだけど。」  企画展示室に莉央の絵も飾られていた。 何かの賞を取ったようで金のリボンが付いていた。 「入賞したんだ。」 「ホントだ、すごい。」  莉央はこう言うのが嫌だった。知らない奴が彼の作品に優劣を付ける。こんな不愉快な事はない。誰かよりは上手いが、誰かよりは劣る、って何だよ。だから莉央は誰にも見せないで,一人描き続けて来たのだ。  教授だと言う男が近づいて来た。 「沼田先生だよ。視覚伝達科の教授。 専門はダダイズム。」  譲に紹介された。 「君がこの絵の作者だって?」  莉央は黙って沼田という男を見つめた。ずっと黙っている。挨拶をする気もない。 「莉央・・」 芽瑠が心配そうに声を出す。 「先生すみません、彼は無口なんです。」  沼田も莉央をじっと見つめる。 「私のアトリエにいらっしゃい。 ゆっくり話を聞きたい。」ーー 「高校生から大学生の年令を演じるんですね。」 「そう、ちょっときついな。 すぐ実年令になるんだけどね。違う俳優に高校生だけやってもらおうか、っていう話もあったんだけど、監督が俺で行くって言うんだよ。  正樹は、どう思う?」 「ええ、鷹尾さんが嫌じゃなければそのままで。」  俺は若々しい鷹尾さんもいいなぁ、と思っていた。動きが若い。何だか可愛い、と思ってしまった。 ーー沼田教授は莉央に入れ込んでいる。 困った譲が 「先生、浅井はここの学生じゃないんです。」 「構わないよ。彼は天才だ。天才は滅多にいないんだ。この大学にもいないだろう。」  譲と芽瑠は、買い被りすぎだ、と思った。 「先生のヤバい噂を聞いたよ。」ーー

ともだちにシェアしよう!