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第28話 ドール
「なんか茶番だな。ドールって何?」
お約束の美少年が出て来た。
「美少年って陳腐だ。誰がこの役やるんだろう。」
俺は嫉妬の混じった感情を持て余した。鷹尾さんと絡む美少年?
鷹尾さんは断りもせず、このドラマを続けるらしい。
「俺はどんな芝居も途中で投げ出した事はないんだよ。」
俺なんかが口を挟む権利はない。わかっているけどモヤモヤする。
ドール役に決まったのは今売り出し中の歌手、
永井蓮だった。綺麗な大きな瞳の美少年。
ーー美大にクロッキーモデルとしてやって来たドールを見出したのは沼田教授だった。
女子が騒いでいた美しいモデル。短い時間で済むクロッキー。ヌードだ。
15才のドールはしたたかに教授に近づいた。
沼田教授は大学でそれなりに権力を持っている。
「綺麗な顔をして腹黒い奴だ。
そこが私を捉えて離さないんだが。」
ドールがアトリエに住む事を許した。
あれから五年が過ぎた。ドールは二十歳になった。莉央は25才。新進気鋭の画家として数々の賞を取って画壇に名を連ねている。
譲と芽瑠はそれぞれ広告会社に就職した。
あの沼田教授は老齢ながらお元気で,現役の画家を続けている。画壇の重鎮として、莉央のパトロンになった。
莉央は精神の均衡を保つためにドールを愛する。その人形のような透き通る肌を愛でる。
アトリエの奥にあるベッドルームで抱き合うのは莉央とドール。教授はそれを許している。
「莉央、激しいね。僕疲れたよ。もう許して。」
「駄目だよ。離さない。」
そう言ってなめらかなドールの腰を撫でまわす。
「いつまでも眺めていたい。綺麗だ。」
莉央はますますドールに執着する。抱き合うたびに執着が強くなる。
時々教授が我が物顔で寝室に入ってくる。
「教授、俺たちが愛し合ってる時に失礼ですよ。」
「おや?ドールは私の物だったはずだが。」
莉央は教授の経済力が腹立たしい。
「俺も絵に値段がつくようになったんですよ。
号の値段が、ね。」
「ドールを買おうと言うのかね。
ドールは物じゃない。愛してあげなさい。」
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