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第29話 醜い老人
莉央は教授に言った。
「あなたは自分の醜さを知るべきだ。」
莉央はそれなりに美しい青年だ。
「美、とは何かね。
キミたちが愛し合っているのは美しいのかね?」
「先生、盗み見るのはやめてください。」
「キミたちは全部私のものだ。
私が生かしている。」
「傲慢ですね。浅井莉央を売り出したのは先生ですが、俺は実力でのし上がって来た。
現に天才と言われている。」
沼田教授は残念に思った。
確かに五年前のあの絵は、心を揺さぶるものがあったが、最近の絵には何もない。
「莉央は何が描きたいんだ?
こちらに伝わって来ないよ。」
「俺はドールが欲しいんだ。
ドールの全てを描きたいんだ。
ここじゃダメだ。ここでは描けない。」
ドールを連れ去りたい。でもどこへ?
莉央には母のいるあの家しかない。
「ばあちゃんの残したあの家。
今でも母が一人で住んでいる。」
あの家では何もインスパイアされない。
ドールには贅沢が身に付いている。教授に甘やかされて暮らしている。
安い酒や貧しい食卓は似合わない。美しい絹のシャツしか似合わないんだ。
莉央の葛藤が絵に現れる。
「この頃の莉央の絵には、品がない。」
苦悩の中でドールを抱く。
「莉央、好き。」
「ドール、教えて。ドールの名前を知らない。
ドールはどこから来たの?
家族は?家はどこ?」
真っ直ぐに莉央を見つめるドールの瞳に涙が溢れて零れる。
宝石のようなその瞳に魅入られる。
「あーっ、もうどうでもいいよ、そんな事は。
ドールを離したくない。」
教授が寝室に入って来て,当然のようにドールを抱いて撫で回す。莉央はだんだん許せなくなって来た。
「そもそもキミは勘違いしているよ。
ドールの好きな物は全部高価だ。それらを与えてやる事がキミに出来るのか?」
「大丈夫です。俺の家に来ると約束しました。」
ドールは無垢なその瞳でうなづいてくれた。ーー
「ふうっ。なんか息苦しいドラマだね。
俺、このドラマ、見たくないかも・・・。」
悲しそうな顔の鷹尾さんがいた。
「ごめんなさい。でも、鷹尾さんの素敵さ、が伝わって来ない。」
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