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第31話
やっと仕事が落ち着いた日だった。
珍しく早く終わってそのまま帰ろうとした時。
「湊」
呼び止められる。
振り返ると、久しぶりに見る榊原だった。
「ちょっといい?」
断る理由もなくそのままついてきく。
気づけば車に乗せられていた。
「どこ行くんですか」
「着けばわかる」
それ以上は聞かなかった。
車が止まる
連れてこられたのは、榊原の自宅だった。
中に入る。
リビングに足を踏み入れて少しだけ足が止まる。
床に散らばる雑誌
テーブルの上の空のペットボトル。
ソファに積まれた服
「……」
榊原が後ろから言う。
「最近バタバタしてたし」
軽く笑う
「本職も落ち着いたことだし」
「そろそろ頼みたかったんだよねぇ」
湊は部屋を見回す。
「…なんでここまで」
少しの間
「散らかるんですか」
榊原は肩をすくめる。
「うーん、気づいたらこんな感じ」
湊は床のものをひとつ拾う。
「気づかないものですかね」
「忙しいとね」
と榊原は少し笑う。
湊はそれ以上何も言わなかった。
ただ、もう一度部屋を見た。
少し考える。
「とりあえず片付けますね」
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