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第38話

湊が少し落ち着いてきた頃。 榊原はそっと肩を離した。 「とりあえず、お風呂入っておいで」 湊は小さく頷く。 立ち上がり、お風呂場へ向かおうとすると、 「着替え置いとくから」 後ろから声がかかる。 「ゆっくり浸かっておいで」 「……はい」 湊はその言葉に甘えることにした。 久しぶりにゆっくりと湯船に浸かる。 熱すぎない湯が身体を包む。 肩まで沈めると、張り詰めていた身体が少しずつ緩んでいくのが分かった。 何も考えない。 考えようとしても、うまくまとまらない。 だから目を閉じた。 気づけば、思っていたより長く浸かっていた。 風呂から上がる。 脱衣所には畳まれた着替えが置いてあった。 手に取る。 柔軟剤の石鹸の匂いが少しした。 用意されたTシャツに袖を通す。 少し大きい。 肩が落ちる。 袖も余る。 ズボンも少し長い。 裾を一度折る。 鏡を見る。 いつもの自分なのに、少しだけ違って見えた。 理由は分からない。 リビングへ戻ると、 榊原がソファに座っていた。 こちらを見る。 「お、似合うじゃん」 湊は自分の袖を見る。 「大きいです」 榊原は笑った。 「そりゃ俺のだからな」 その笑顔を見て、 湊は少しだけ肩の力が抜けた気がした。

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