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第42話

すごくあったかい夢を見た気がする。 だけど。 目を覚ました頃には何一つ思い出せなかった。 「湊」 名前を呼ばれて、ゆっくり目を開ける。 視界に入った榊原はどこか楽しそうだった。 口元が少し緩んでいる。 「……?」 何かあっただろうか。 寝ぼけた頭ではよく分からない。 「おはよう」 「もう昼前」 そう言われて時計を見る。 確かに昼前だった。 「結構寝てたぞ」 榊原はくすりと笑う。 何がおかしいのか分からない。 「そうですか」 布団から身体を起こす。 まだ眠い。 ベッドは暖かいし柔らかい。 できることならもう少し寝ていたい。 「顔洗ってこい」 「飯できてるから」 その言葉に小さく頷く。 洗面所で顔を洗う。 冷たい水が頬を伝う。 少しだけ頭がはっきりした。 リビングへ戻ると、 テーブルには朝とも昼ともつかない食事が並んでいた。 味噌汁。 卵焼き。 焼き魚。 サラダ。 「……」 「なに」 榊原が聞く。 「作ったんですか」 「作った」 少しだけ驚く。 人気俳優という認識はある。 だから勝手に料理なんてしない人だと思っていた。 「食べれるうちに食べとけ」 「冷めるぞ」 湊は席につく。 「いただきます」 箸を伸ばした。 一口食べる。 「……」 「どう?」 榊原が聞いてくる。 湊は少し考えた。 「美味しいです」 榊原は満足そうに笑った。 その笑顔を見て、 昨日ほどではないけれど、 胸の奥が少しだけ温かくなった気がした。

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