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第43話
食事を終えたあと。
少しだけゆっくりしてから、家まで送ってもらうことになった。
湊の服は洗濯してしまったらしく、
今日は榊原の服を借りている。
少し大きい気がする。
でも窓から差し込む暖かな光のせいか、
頭はまだうまく働かなかった。
「次の掃除の時に返して」
そんな条件で借りることになった。
移動中はほとんど会話をしなかった。
でも、それでよかった。
無理に何か話さなくても苦にならない。
そんな相手は初めてかもしれない。
自宅へ到着する。
車を降りようとした時だった。
「そうだ」
榊原が呼び止める。
差し出されたのは一つの封筒。
「足りないと困るから」
「今確認して」
言われるまま封を開く。
中身を見る。
すっかり忘れていた。
昨日の返済金だった。
「え……」
思わず封筒を返そうとする。
「でも――」
「泊まってくれたお礼」
榊原が指を一本立てる。
「一緒に飯食ってくれたお礼」
もう一本。
「あとクリーニング代」
「まぁ諸々」
そう言って笑う。
「気にしなくていいから」
湊は何も言えなかった。
正直、戸惑っていた。
すると榊原が小さく笑う。
「またなんか考えてるでしょ」
「……」
図星だった。
「今は今のことだけ考える」
穏やかな声だった。
「分かった?」
湊はゆっくり頷く。
「よし」
榊原は満足そうに笑った。
「じゃあまた仕事場で」
「はい」
車が走り去る。
湊はその足で銀行へ向かった。
返済を済ませる。
それだけ。
本当にそれだけだった。
それなのに。
銀行を出た時。
ふと。
(……榊原さん)
会いたい。
そう思ったわけじゃない。
でも。
また会いたくなった気がした。
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