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第55話

「正直」 湊は俯いたまま呟く。 「会いたかったかは分かりません」 榊原は黙って聞いている。 「でも」 言葉を探す。 「地方に行ってる時の写真を見た時に」 胸元をぎゅっと掴む。 「ここが」 「少しだけ痛くなって」 「……うん」 「それからずっと」 「苦しくて」 声が震える。 「何でか分からないんです」 涙が零れる。 「ずっと泣いてました」 「……」 「榊原さんに会ったら」 少し間。 「少し楽になりました」 「でも」 「まだ痛いです」 そう言って胸を押さえる。 「連絡すればよかったのに」 「それも思いつかなくて」 「ただ泣いてました」 部屋が静かになる。 榊原はしばらく何も言わなかった。 そして。 「泣きすぎ」 「……」 「目、腫れてる」 そう言ってティッシュを押し付けてくる。 湊は素直に受け取った。 「かっこ悪いですよね」 ぽつりと零す。 榊原は少し笑う。 「別に」 「俺の前だし」 あまりにも自然に言うから、 湊は顔を上げる。 「それに」 榊原は少し考える。 「胸が痛くなって」 「俺見たら少し楽になって」 「声聞いたら泣いて」 指を折りながら数える。 「俺だったら」 少し間。 「結構嬉しいけどな」 「……?」 意味が分からない。 榊原は苦笑する。 「まだ分かんないか」 そして腫れた目元を親指で軽く拭う。 「じゃあ今はそれでいいよ」 「無理に答え出さなくていい」 「その代わり」 少し笑う。 「次から泣く前に連絡な」 「……」 「俺、地方でも電話くらい出れるから」 その言葉を聞いた瞬間、 湊の胸の痛みが少しだけ軽くなった気がした。

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