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第61話
コンビニの仕事にも慣れた。
相変わらずやりたいことは見つからなかったけれど、生活には困っていない。
それで十分だった。
「ありがとうございましたー」
レジを終え、次の商品を受け取る。
そんな毎日の繰り返し。
その日も変わらないはずだった。
店に一人の男性が入ってくる。
帽子とマスク。
どこにでもいそうな格好だった。
湊は特に気にしなかった。
会計を終える。
「ありがとうございました」
男性は一瞬だけ湊を見る。
「……」
何かを考えるような顔をしたあと、そのまま店を出て行った。
湊も気にしなかった。
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だが数日後。
撮影現場。
「そういえば榊原さん」
休憩中、後輩俳優が声をかける。
「ん?」
「この前コンビニで見ましたよ」
「何を?」
「湊くん」
その瞬間だった。
榊原の手が止まる。
「……誰を?」
「だから湊くん」
後輩は首を傾げる。
「知り合いじゃなかったです?」
「どこで」
思ったより低い声が出た。
後輩が少し驚く。
「○○駅の近くのコンビニですけど」
「名札も湊でしたし」
「たぶん本人ですよ」
榊原は言葉を失った。
何ヶ月探したと思っている。
電話は繋がらない。
住所も分からない。
職場も辞めていた。
まるで煙のように消えたと思っていた。
それなのに。
コンビニ?
普通に働いてる?
「……」
「榊原さん?」
「なんでもない」
そう答えたが、
全然なんでもよくなかった。
翌日。
榊原は仕事を調整した。
そして教えられたコンビニへ向かった。
店内へ入る。
いるわけない。
そう思っていた。
なのに。
「いらっしゃいませ」
聞き覚えのある声がした。
レジの向こう。
見慣れた顔。
湊だった。
榊原は思わず立ち止まる。
湊は商品を並べ、客の対応をしていた。
そして。
何気なく顔を上げる。
目が合った。
数秒。
時間が止まる。
「……あ」
湊の顔から血の気が引いた。
まるで幽霊でも見たみたいな顔だった。
榊原はそんな顔を見て、
ようやく笑った。
安心したように。
呆れたように。
少し怒っているように。
「見つけた」
小さくそう呟いた。
湊は何も言えなかった。
ただ。
胸の奥が、
久しぶりに痛くなった気がした
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