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第62話
バイトが終わる頃。
コンビニの駐車場には見覚えのある車が停まっていた。
「……」
思わず足が止まる。
何度も乗った車。
何度も見送った車。
そして。
何度も会いたいと思った人の車。
運転席のドアが開く。
榊原が降りてきた。
「お疲れ」
まるで昨日も会っていたみたいな顔をする。
「……お疲れ様です」
「乗る?」
そう言われて頷く。
断る理由が思いつかなかった。
助手席に座る。
ドアが閉まる。
少ししてエンジンがかかった。
車が静かに走り出す。
沈黙。
気まずいわけじゃない。
でも何を話していいのか分からない。
そんな空気を壊したのは榊原だった。
「明日のバイト何時から?」
「えっと……朝からです」
「ふーん」
榊原は頷く。
赤信号で車が止まる。
そして当然のように言った。
「じゃあ俺ん家泊まれるよね」
「……」
湊は瞬きをする。
質問だっただろうか。
いや。
たぶん違う。
もう決まっている気がした。
「……はい」
小さく返事をする。
榊原は満足そうに笑った。
「よし」
それだけだった。
どこへ行くのか。
何を話すのか。
まだ何も聞かれていない。
でも。
隣に榊原がいるだけで、
胸の奥にずっとあった痛みが少しずつ薄れていく気がした。
そんな自分が少し不思議だった。
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