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第65話

「とりあえず」 榊原が立ち上がる。 「飯食うか」 「……はい」 「朝から働いてたんだろ」 「食べました」 「何を」 「おにぎりです」 「それ朝だろ」 図星だった。 榊原は呆れたように笑う。 「やっぱりな」 そう言ってキッチンへ向かう。 冷蔵庫を開ける。 「何食べたい?」 「なんでも」 「それ一番困るやつ」 しばらくしてテーブルには簡単な夕食が並んだ。 温かい味噌汁。 卵焼き。 焼き魚。 ご飯。 派手じゃない。 でも落ち着く。 久しぶりに誰かと食べる食事だった。 「美味しい?」 「……美味しいです」 「よかった」 榊原は満足そうだった。 食後。 湊は立ち上がる。 「じゃあ掃除します」 「やる気満々じゃん」 「気になるので」 「知ってる」 榊原は笑った。 そこから二人で部屋を片付ける。 洗濯物を回す。 服を畳む。 ゴミをまとめる。 書類を分ける。 「これ必要ですか?」 「たぶん必要」 「たぶん?」 「覚えてない」 「ダメじゃないですか」 そんなやり取りを繰り返す。 気づけば部屋はかなり綺麗になっていた。 「よし」 湊は満足そうに頷く。 「達成感すごい」 榊原は笑った。 「お前ほんと掃除好きだな」 「好きではないです」 「じゃあなんでそんな嬉しそうなの」 「綺麗だからです」 「同じだろ」 結局また笑われた。 そして。 「じゃあ次」 榊原が伸びをする。 「風呂」 「……はい」 「着替え出しとく」 「ありがとうございます」 湊は浴室へ向かう。 温かい湯気の中でふと思う。 少し前まで、 一人だったはずなのに。 今はまた、 この家にいる。 不思議だな。 そんなことを思いながら、 湯船へゆっくり身体を沈めた。

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