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第78話
榊原がいなくても、ちゃんとバイトには行った。
朝起きて。
支度をして。
コンビニへ向かう。
いつも通りのはずだった。
だけど今は大手キャラクターとのコラボキャンペーン期間中。
店内は朝から忙しい。
対象商品を探すお客さん。
景品の在庫確認。
問い合わせ。
レジ。
気づけばあっという間に時間が過ぎていた。
「お疲れ様ー」
「お先です」
仕事を終え、帰ろうとした時だった。
店内に設置されていたキャンペーンコーナーが目に入る。
その中にいた。
コラボキャラクターのぬいぐるみ。
「……」
なんとなく手に取る。
ふわふわしている。
可愛い。
それだけだったはずなのに。
気づけばレジに持って行っていた。
買う理由は分からない。
本当に分からない。
ただ。
なんとなく。
そばにいてくれる気がした。
そんな気がした。
帰宅する。
自分の家ではない。
榊原の家。
鍵を開ける。
「ただいま」
返事はない。
当たり前だ。
榊原はいない。
少しだけ静かな部屋。
湊は買ったぬいぐるみの袋を開ける。
タグを外す。
そして。
抱きしめてみた。
ふわふわだった。
柔らかい。
温かくはないのに。
なぜか安心する。
ソファへ座る。
ぬいぐるみを抱えたまま。
テレビをつける。
内容は頭に入ってこない。
それでも。
さっきまで胸の奥にあった寂しさが、
少しだけ薄くなった気がした。
「……」
ぬいぐるみを抱き直す。
榊原がいつも座っている場所で丸くなっていた。
あと何日だっけ。
帰ってくるの。
そんなことを考えながら、
湊はそっとぬいぐるみの頭を撫でた。
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