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第79話(榊原side)

地方での仕事が終わり、 ようやく帰りの新幹線へ乗り込む。 「お疲れ様でした」 隣の席でマネージャーが資料をまとめながら言った。 「マジ疲れた」 榊原はシートへ深く沈み込む。 数日間ほぼ休みなし。 取材。 撮影。 イベント。 移動。 さすがに疲れていた。 「でも無事終わりましたね」 「そうだね」 そう言いながらスマホを見る。 湊からの連絡は来ていない。 たぶんなんかしてるんだろうな。 そんなことを考えていると、 マネージャーが紙袋を差し出してきた。 「あとこれ」 「ん?」 受け取る。 少し高そうなお菓子だった。 「私の方から湊さんに謝罪の品です」 榊原が思わず顔を上げる。 「気にしなくていいのに」 「気にします」 即答だった。 「こちらのミスというか」 マネージャーはため息を吐く。 「本当にすみませんでした」 榊原は袋を見つめる。 「まぁ湊だからな」 「怒ってないと思います」 「だから余計にですよ」 マネージャーは苦笑した。 「普通なら怒るところです」 「うん」 「でもあの人怒らないじゃないですか」 「うん」 「だから気づきにくいんですよね」 榊原は少しだけ黙る。 その通りだった。 湊は怒らない。 嫌だとも言わない。 だから。 傷ついていても分からない。 「新人の方も反省してました」 「それならいいよ」 「かなり落ち込んでましたけど」 「自業自得」 即答だった。 マネージャーが吹き出す。 「厳しいですね」 「だって湊泣かせたら困るし」 「泣いてないと思いますよ」 「たぶん」 二人で顔を見合わせる。 「……泣いてはないか」 「ですね」 でも。 落ち込んではいたかもしれない。 そう思うと少しだけ胸が痛んだ。 「早く帰ろ」 榊原は窓の外を見ながら呟く。 帰ったら。 たぶん。 ソファで寝てるんだろうな。 そんな予感がしていた。

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