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第81話
アラームの音で目が覚めた。
ぼんやりと目を開く。
すると。
どこかから美味しそうな匂いがしてきた。
「……」
少しだけ頭が回る。
この匂いは。
「あ、起きた」
聞き慣れた声。
キッチンの方を見ると榊原がいた。
「おはよ、湊」
「……おはようございます」
「ご飯できるから顔洗っておいで」
「はい」
ソファから起き上がる。
そして。
「あ」
思い出した。
「おかえりなさい」
榊原が少しだけ笑う。
「うん」
「ただいま」
なんだかそれだけで安心した。
洗面所へ向かう。
顔を洗う。
歯を磨く。
眠気を追い出してからリビングへ戻った。
テーブルには朝食が並んでいる。
いただきますと言って席につく。
久しぶりに榊原と向かい合って食べる朝食だった。
「そういえば」
味噌汁を飲んでいた榊原が口を開く。
「その子どうしたの?」
「?」
指差された方を見る。
ソファの上。
買ったぬいぐるみだった。
「あぁ」
少し考える。
「働いてるコンビニでコラボキャンペーンやってて」
「そのコラボのぬいぐるみ買いました」
「へぇ」
榊原はぬいぐるみを見る。
そして湊を見る。
またぬいぐるみを見る。
「ふーん」
なぜか少しだけ不満そうだった。
「……?」
理由が分からない。
「あ、迷惑だったら」
ぬいぐるみを見る。
「もう持って帰るので」
そう言うと。
榊原は思い切りため息を吐いた。
「怒ってないよ」
「でも」
「むしろ」
少し笑う。
「大事そうに抱いて寝てたなと思って」
「……」
記憶がない。
たぶん寝ていた。
「気持ち良さそうだったよ」
「そうですか」
「そう」
榊原はコーヒーを飲む。
「名前は?」
「名前?」
「そのぬいぐるみ」
考える。
考えるけど。
「ないです」
即答だった。
「つけてないの?」
「必要ですか?」
「必要じゃないけど」
榊原は笑う。
「俺より大事にしないでね」
「?」
意味が分からない。
湊が首を傾げると、
榊原はまた吹き出した。
どうやら何か面白かったらしい。
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