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第84話

コンビニでレジを打ちながら、ふと思い出した。 そういえば。 そろそろ榊原の誕生日だ。 「いらっしゃいませー」 商品のバーコードを通しながら考える。 何がいいだろう。 服。 いや、サイズが分からない。 香水。 好みがある。 ネクタイ。 仕事で使うだろうけど、なんか違う。 「ありがとうございましたー」 お客さんを見送る。 うーん。 何がいいんだろう。 そんなことを考えていた時だった。 そういえば。 以前。 「仕事用の時計はあるんだけどさ」 「プライベート用持ってないんだよね」 そんなことを言っていた気がする。 時計。 それなら使ってくれるかもしれない。 高すぎるものは買えない。 でも。 普段お世話になっているし。 誕生日だし。 それくらいなら。 「よし」 小さく頷く。 多分今日は帰りが遅い。 だったら。 仕事終わりに見に行こう。 決まった瞬間だった。 それから数時間後。 バイトを終えた湊はショッピングモールへ向かった。 時計売り場。 正直よく分からない。 店員に聞く。 説明を聞く。 何本か見せてもらう。 その中に一本だけ目に留まった。 シンプル。 見やすい。 派手じゃない。 でも少しだけ格好いい。 なんとなく。 榊原っぽい気がした。 「これください」 そう言って購入する。 包装された箱を受け取る。 少しだけ緊張した。 喜んでくれるだろうか。 そんなことを考えながら帰宅する。 榊原の家へ戻る。 箱は見つからないように自分のバッグの奥へ隠した。 「……」 そういえば。 当日はケーキもいる。 せっかくなら。 前から気になっていたケーキ屋のやつがいい。 自分も食べてみたかったし。 ろうそくはいるだろうか。 プレートは。 ご飯は。 考えることが増えていく。 気づけばメモ帳を開いていた。 誕生日まであと少し。 榊原に見つからないように。 こっそりと計画を立て始めるのだった。

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