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第85話

何もない休みの日だった。 湊は一人でケーキ屋へ来ていた。 「予約お願いします」 店員に声をかける。 誕生日当日の受け取り。 名前。 時間。 ケーキの種類。 全部伝える。 これでひとつ終わった。 店を出ながらスマホを見る。 次はシフトだ。 誕生日当日は休みを取れるように調整してもらおう。 そこまで考えて。 「……」 食べ物。 何がいいだろう。 ケーキだけでは寂しい気がする。 せっかくならご飯も用意したい。 でも。 榊原の好きなものって何だっけ。 意外と知らない。 料理は何でも食べる。 好き嫌いも聞いたことがない。 最近は余裕が出てきたから、 バイト仲間やスタッフ達に教えてもらった店へ行くことも増えた。 「そこのハンバーグ美味しいよ」 「パスタならあそこ」 「カレーならここ」 教えてもらった店を一人で巡る。 少しだけ楽しかった。 そういえば。 前に榊原が頼んでくれたカレー。 あれも美味しかった。 ナンがもちもちだった。 思い出すだけで少しお腹が空く。 「……」 カレー。 ケーキ。 カレー。 ケーキ。 合うんだろうか。 分からない。 たぶん。 合わない気がする。 いや。 別々に食べればいいのか。 そもそも誕生日なのにカレーでいいのだろうか。 ハンバーグ? オムライス? パスタ? 考えれば考えるほど分からなくなる。 湊はベンチへ座る。 スマホのメモ帳を開く。 【誕生日計画】 ・ケーキ予約済み ・シフト調整 ・プレゼント購入済み ・ご飯 未定 「……」 未定。 難しい。 でも。 こうやって悩むのは嫌じゃなかった。 喜んでくれるだろうか。 そんなことを考えながら、 湊はおすすめされた飲食店の一覧をもう一度眺めるのだった。

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