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第95話
やけに榊原の匂いがする。
どこか落ち着く匂い。
最近よく嗅いでいる匂い。
抱きしめられた時みたいに近い。
そんな感覚があった。
それに。
温かい。
いつもならソファは自分の体温で温かくなるだけなのに。
今日は最初から温かい。
全体的に。
そして少し硬い。
「……」
ぼんやり考える。
なんだろう。
寝ぼけた頭では答えが出ない。
「そろそろ起きないと寝れなくなるぞー」
声が聞こえた。
榊原の声。
しかも近い。
かなり近い。
「おーい」
頭を軽く撫でられる。
「起きろー」
そこでようやく目を開けた。
視界いっぱいにシャツが見える。
「……?」
まだ頭が回らない。
ゆっくり顔を上げる。
そこにいた。
榊原だった。
「起きた?」
「……」
数秒。
考える。
なんで。
榊原がいるんだろう。
そして。
なんでこんなに近いんだろう。
さらに数秒。
視線を下へ向ける。
自分。
榊原の上にいた。
「……」
「……」
榊原は笑いを堪えている。
「やっと気づいた?」
「すみません」
即答だった。
慌てて起き上がろうとする。
でも。
ぬいぐるみが腕に挟まっている。
変な体勢になる。
「落ち着けって」
榊原が吹き出した。
「大丈夫だから」
「すみません」
「それ三回目」
湊は耳まで赤くなっていた。
そんな湊を見ながら榊原は笑う。
「帰ってきていきなりダイブしてきたんだからな」
「ダイブしてません」
「してたよ」
「してません」
「してた」
言い返そうとして。
思い出す。
確かにソファに寝転がった。
その後は覚えていない。
「……」
反論できなかった。
榊原はそんな様子を見てまた笑う。
「まぁ」
ぽんと頭を撫でる。
「俺の上で熟睡できるくらい安心してるならいいけど」
「……」
その言葉の意味を考える前に。
また頭を撫でられた。
その手はいつもみたいに優しかった。
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