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第96話
それからご飯を食べた。
テレビを見ながら他愛のない話をして。
いつも通りの時間を過ごした。
お風呂にも入った。
でも。
一つだけ問題があった。
榊原の顔が見れない。
理由は分かっている。
ソファだ。
思い出すたびに恥ずかしくなる。
自分ではソファに寝転がったつもりだった。
なのに。
実際は榊原の上だった。
しかも熟睡していた。
思い出しただけで顔が熱くなる。
だから。
ご飯中も。
テレビを見ている時も。
なるべく視線を合わせないようにしていた。
「湊」
「はい」
返事だけする。
顔は見ない。
「湊」
「はい」
やっぱり見ない。
「湊」
「はい」
三回目だった。
不思議に思って顔を上げる。
すると。
目の前に榊原の顔があった。
「っ」
思わずのけぞる。
榊原が覗き込んでいた。
「何してるんですか」
「ん?」
「近いです」
「そう?」
全然悪びれていない。
「心臓に悪いです」
榊原は吹き出した。
「なんの事かな〜」
「絶対分かってますよね」
「分かんないなぁ」
「遊ばないでください」
湊が少しだけ睨む。
すると榊原はさらに楽しそうに笑った。
「遊んでないよ」
「遊んでます」
「遊んでない」
「遊んでます」
「じゃあ確認なんだけど」
榊原が頬杖をつく。
「俺の上で寝たの誰だっけ」
「……」
「ソファにダイブしたの誰だっけ」
「……」
「ぬいぐるみ抱いて熟睡したの誰だっけ」
「……」
反論できない。
榊原は堪えきれず笑い出した。
「ほんと面白い」
「面白くないです」
「面白いよ」
ぽん。
頭を撫でられる。
「可愛かったし」
「っ」
今度こそ顔が真っ赤になった。
榊原はそんな湊を見ながら、
楽しそうにケラケラ笑っていた。
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