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第99話

また前の職場の手伝いに来ていた。 忙しい時間帯も落ち着き、 ようやく休憩になった。 休憩室で飲み物を飲みながら、 スタッフ達と雑談をしていた時だった。 「はぁ……」 隣から大きなため息が聞こえる。 「どうかしたんですか」 湊が聞くと、 スタッフは机に突っ伏した。 「いやぁ」 「雑誌の特集でね」 「榊原さんが気になる人いるって書いてあって」 「あぁ」 そういえばそんな取材も受けていた気がする。 「榊原さんの気になる人になりたかったなぁ」 本気で悔しそうだった。 「なるほど」 湊は納得する。 榊原は人気だ。 そういう人も多いだろう。 「でもまぁ無理かぁ」 「無理なんですか」 「だって榊原さんだよ?」 スタッフは大げさに肩を落とした。 「競争率高すぎるって」 「そういうものですか」 「そういうものなの」 湊にはよく分からない。 少し考える。 「特徴とか書いてなかったんですか」 「それがさぁ」 スタッフが身を乗り出す。 「内緒って書いてあったんだよ!」 「内緒」 「そう!」 「年齢も秘密」 「職業も秘密」 「性別も秘密」 「全部秘密!」 「なるほど」 「なるほどじゃないの!」 スタッフは机を叩く。 「気になるじゃん!」 「確かに」 「絶対知ってる人だと思うんだよねぇ」 「そうなんですか」 「だって最近の榊原さん見た?」 「?」 「なんか機嫌いいのよ」 別のスタッフも頷く。 「分かる」 「時計見てニヤニヤしてるし」 「してる!」 「怖いくらい機嫌いい!」 休憩室が盛り上がる。 湊は黙ってお茶を飲む。 時計。 あれか。 誕生日に渡したやつ。 そう思ったが言わない。 言ったら大変なことになる気がした。 「くぅ〜」 スタッフは頭を抱えた。 「気になる!」 「気になりますね」 「湊ちゃんもそう思うでしょ!?」 「はい」 気になる。 確かに気になる。 榊原が気になる人。 誰なんだろう。 そんなことを考えながら、 湊はもう一口お茶を飲んだ。

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