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第103話

次の日。 コンビニのバイトへ向かった。 いつも通り出勤する。 すると。 「ちょっと待って!」 店長に呼び止められた。 「どうしたのその怪我!」 指差された先。 昨日切った指だった。 絆創膏がしっかり貼られている。 「あぁ」 「ちょっと何かで切って」 そう答えると、 店長の顔がさらに曇った。 「え、大丈夫?」 「はい」 「痛くない?」 「大丈夫です」 「いやいや」 店長は首を横に振る。 「今日休みでもいいよ」 「でも」 「大丈夫!」 食い気味だった。 「こっちはなんとかするから!」 「ゆっくり休んで!」 「……」 断る隙がない。 「はい」 「わかりました」 結局。 出勤して数分で帰ることになった。 店を出る。 朝の空気。 何とも言えない気持ちだった。 昨日は前の職場。 今日はコンビニ。 二日連続。 何もできなかった。 「……」 胸が少し痛む。 自分では大した怪我じゃないと思っている。 なのに。 みんな休めと言う。 休めと言われるたびに。 自分が邪魔だったみたいな気がしてしまう。 そんなことないはずなのに。 考えてしまう。 そのまま榊原の家へ帰る。 静かだった。 いつもなら掃除をしたり、 洗濯をしたり、 何かしらやることがある。 でも。 最近は違う。 部屋は綺麗だ。 洗濯も終わっている。 やることがない。 ソファへ座る。 ぼーっとする。 テレビもつけない。 「……」 ここにいていいのだろうか。 ふと思った。 最近。 自分がいなくても回っている。 前の職場も。 コンビニも。 榊原の家も。 綺麗だし。 困っていない。 「大丈夫かな」 小さく呟く。 そのまま立ち上がった。 少しだけ。 自分の家へ帰ってみようと思った。 久しぶりだった。 鍵を開ける。 扉を開く。 少しだけ湿った空気。 誰もいない部屋。 どこか埃っぽい匂い。 窓を開ける。 カーテンが揺れる。 外の風が入ってくる。 久しぶりの空気だった。 「……」 気持ちいい。 深く息を吸う。 胸につかえていた何かが少しだけ軽くなった気がした。 自分の家。 小さいけど。 静かだけど。 ちゃんと自分の場所だ。 しばらく窓際に立つ。 風を感じる。 そして思う。 榊原が帰ってきたら。 少しだけ。 家に帰りたいって言ってみよう。 ずっといるのも迷惑かもしれないし。 たまには帰らないと。 そう思いながら、 湊は久しぶりの自宅で静かな時間を過ごした。

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