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第109話(修正)

前の職場の手伝いだった。 休憩中。 スタッフ達に雑誌を見せられた。 そこには榊原が写っていた。 隣には綺麗な女優。 楽しそうに笑っている。 「こんなフレンドリーに話されたら誰でも落ちるって」 「わかるぅ」 「付き合いたい人多そうだよね」 「結婚報告とかされたら私泣いちゃうかも」 「わかるわぁ」 楽しそうな会話。 いつもなら。 そうなんですね。 で終わる話だった。 なのに。 今日は違った。 胸の奥がざわつく。 仕事へ戻っても。 帰り道でも。 頭から離れなかった。 結婚。 付き合う。 好きな人。 もし。 榊原にそういう人ができたら。 俺はどうなるんだろう。 考える。 考える。 考える。 そして。 嫌だ。 そう思った。 誰にも渡したくない。 渡したくない? なんで? どうして? その瞬間だった。 好きなんだ。 そう気付いた。 気付いたら走っていた。 榊原の家。 鍵を開ける。 真っ直ぐ寝室へ向かう。 榊原の布団へ潜り込む。 落ち着かない。 全然落ち着かない。 胸が苦しい。 会いたい。 今すぐ。 スマホを手に取る。 電話をかける。 コール音。 心臓がうるさい。 『湊?』 繋がった。 聞き慣れた声。 それだけで少し泣きそうになる。 「あ、えっと」 『うん?』 「あと何日で帰ってきますか」 『あと三日かな』 三日。 長い。 『どしたの?』 優しい声。 もう我慢できなかった。 「すき……」 言ってしまった。 数秒。 何も聞こえない。 失敗した。 絶対失敗した。 「榊原さんが好きで……」 止まらない。 「いないと落ち着かなくて」 「会いたくて」 「だから」 そこでようやく我に返る。 何言ってるんだろう。 俺。 電話の向こうは静かだった。 『……ごめん』 榊原の声。 胸が痛くなる。 やっぱり。 困らせた。 『ごめん、ちょっと今』 『仕事中だから』 そう続く。 当たり前だ。 仕事中なのに。 何を言っているんだろう。 俺は。 『返事』 榊原が息を吐く。 『帰ってからでもいい?』 「……はい」 恥ずかしい。 消えたい。 今すぐ布団に埋まりたい。 『あと三日だから』 「はい」 『ちゃんと帰るから』 「はい」 『待ってて』 「待ってます」 電話が切れる。 静かになる。 数秒。 数十秒。 そのまま固まる。 そして。 布団へ顔を埋めた。 言った。 言ってしまった。 好きって。 電話で。 勢いで。 三日後。 顔を合わせる。 無理だ。 絶対無理だ。 でも。 帰ってくる。 榊原が帰ってくる。 そう思うと。 少しだけ嬉しくて。 少しだけ安心して。 湊は榊原の布団をぎゅっと握りしめた。

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