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第17話 近くて、遠くて、触れたくて ※
「保。玄関の戸締り頼むぞ」
「はい」
よっこらせと一呼吸置いてオーナーが杖をつきながら奥の自室へ向かう。保は窓や入り口の鍵を閉めて大風呂の掃除に向かった。時刻は夜の十二時。大風呂の利用時刻は十一時半までなのですでに客は出払ったあとだ。
浴室用のモップを担いで風呂の湯栓を外すと、大渦を巻きながら湯が排水溝に流れていく。洗剤をモップに染み込ませ、ごしごしとタイルを磨きながらホースで水を流していく。いつもはオーナーと一緒に掃除をしていた分、保の負担は大きくなったが手慣れているので時間さえあればすぐに終えられた。
風呂の戸締りを終えてから自室に戻る。大学の教科書が散らばっているのは今が試験前だからだった。机に向き直りシャーペンを握る。ゼミを決める試験が来週に迫っていた。保は経済学部に所属しているため、どの専攻にするか悩んでいた。経営はちょっと違うような気がするし、株も違う気がする。無難に一番人気の豊永ゼミに決めたが、毎年定員をオーバーする人数の振り落としのために試験が課せられているため図書館で参考書を借りてきた。
いよいよ三年生らしくなってきたと思っているところで、不意に電話が鳴る。こんな時間に誰だろうと思ってスマホ画面を見ると、峰山と書いてあった。慌てて通話ボタンを押す。
「もしもし」
「お、保。夜遅くに悪いな」
「な、なんですか」
んー、と言葉に詰まりながら峰山が電話越しに笑うのが聞こえてきた。
「なにかなきゃおまえに電話しちゃダメか?」
「別に構わないけど」
ふっと軽い笑い声のあとに、咳払いをするように峰山が喉を震わせる。
「今もさ、男色の芝居をしてるんだけど最近ちょっと不調でさ。役に慣れきっちゃって、新鮮味がないって花房に怒られたんだ」
「それは……大変なんだな」
「だからさ、保の力を貸してくれよ」
へ? と息を飲んでいると、保と甘く名前を呼ばれる。
「電話越しに聞いててくれないか? 俺のするところ」
「っば、馬鹿言うなよ。俺にはそんな趣味ない」
とんでもないお願いに布団に沈んでいた体が飛び跳ねる。脈拍の上がる胸を抑えて、ぶんぶんと首を振った。
「保は聞いてるだけでいいんだ。無茶なお願いじゃないだろう?」
ごそごそと服の擦れるような音がスマホ越しに聞こえてきた。嘘、ほんとにするっていうのか!?
「き、聞いてるだけでいいのか?」
「保がしたかったら一緒にしてもいいけど」
何もかも見透かしたような声で峰山が言う。首筋がぞくりとして、布団の上に寝転んだ。横向きになって枕の上にスマホを置く。この時間ならオーナーはぐっすり寝ているはずだと確信して、峰山の電話を聞くことにした。
「話ながらしてもいいか?」
「う、うん」
はぁっと大きく息を吐くと峰山がすぐそばにいるような気がして体が硬直する。あのときいじられたことを思い出してカッと体が熱くなった。
「花房がさ最近厳しくて……ん……俺のことばっかり叱ってくるんだよ……っ」
途切れ途切れの吐息がたまらなく扇情的だった。保は黙って相槌を打つ。
「そりゃあさ、俺の演技が慣れたのが悪いんだけど……んん……ごめん、やっぱ普通に扱くわ」
どきどきと自分の心臓の音が聞こえる。色っぽい峰山の声につられて、保もそっと微かに反応し始めた股間に手をやる。
「ん……はっ……」
ローションでも塗っているのか電話越しにぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえてくる。ごくりと唾を飲み込み保はズボンの中に手を入れて下着の上からそっと撫でまわすように触れた。じわじわと体の奥が疼いていく。
「保? ……聞いてたら返事して」
切なそうな声に促され、うんと返事をする。自分の声がうわずっていないかそれだけが心配だった。
「いい子……っ……これから実況するから聞いてて」
お願いするような声に、わかったと返事をしてしまった。そのあとで、なんてことをしてしまったんだと後悔する。
「俺のもの見ただろ。でかくて片手だけじゃ刺激が足らないんだ……っ……だからいつも両手で触ってる。……俺は裏筋が弱いからそこを何度も指で擦って……はっ……楽しんでる」
頬に熱が集まる。遠く離れたところで今、この瞬間峰山が自身を扱いている。その事実が信じられそうにない。峰山の声にあてられ、保のものはすでに上を向いていた。下着をずりおろし、直に触れる。少しひんやりとした手に握り込まれてそこはぴくぴくと震えていた。上下にゆっくり手を動かすと、腰がびくびくと揺れる。声を出さないようにもう片方の手で口を塞いだ。
「保。おまえはどこが弱いんだ? ……っ……ぁ……嫌じゃなければ教えてくれ」
「……先っぽが弱い」
くすっと笑い声が向こう側で聞こえる。言った直後に保は赤面した。なにを言ってしまったんだろう俺は。
「そうか。先っぽが弱いのか。……っ……男はみんな好きなところが似てるのかな」
「さぁ……どうだろっ」
ひゅっと喉奥で声が上がる。声がうわずってしまった。ぎゅっと張り詰めた自身のものを握りながら体を固くする。
「……今、保もしてるんだろう? 怒らないから教えて」
優しい声に誘導されて、うんと小さく答える。すると、静かに囁いてきた。
「一緒に気持ちよくなろうよ、保……」
びくっと竿が揺れた。先端を親指の腹で擦ってやると、今にも出してしまいそうになる。
「っ……もう出そうなんでしょ。いいよ、俺が聞いててあげる」
「っ……ん……」
素直に声を上げる自分に驚きながらも、止められなかった。先走りがとろとろと溢れてきて手のひらを濡らす。それがたまらなく気持ちよくて自ら腰を揺らしていた。
「ほんとに可愛いやつだよ、保……っ」
電話の向こうにいる峰山も息が荒くなってきている。そろそろピークなのかもしれない。
「峰山さん……っ……」
「保……」
名前を呼ばれて、背中に電流が流れたようだった。びくんびくんと腰が跳ねて手のひらに精液が飛び散る。鈴口に残った残液を押し出すようにまだ硬いものを緩やかに動かした。
「保、いっちゃったんだね。じゃあ俺もいこうかな……」
はぁはぁと肩で息をする保の声を聞きながら、峰山は自身を追い詰めていく。両手で筒を作り、その中を出し入れする。腰を振るのが止められなくて、布団がぎしぎしと音を立てた。足先がピンと張って、用意していたティッシュの中に精を吐き出す。二枚では足りず、手のひらを濡らしてしまった。ここ最近自分で処理する暇もなかったので当然と言えば当然だが、自分の吐き出した濃い雄の匂いに顔を顰める。
保はそんな峰山の喘ぎ声を聞きながら、再び硬くなったものを扱いていた。裏筋を念入りに擦って快感を貪る。
「っ保……。ありがとう。すごくよかった……」
吐息混じりの声で名前を呼ばれて再び体が熱くなる。頭から湯気が出てしまいそうだ。
「疲れたろ。ゆっくりおやすみ。じゃあ、明日も早いから切るよ」
「おやすみ……」
電話が切れると、保は股間にあてていないもう片方の指を自身の口に入れて唾液をつけた。その手をスウェットの中に入れて、直に胸の突起をいじる。峰山がしてくれたように、緩急をつけながら撫でたり摘んだりしているうちに股間がさらにむずむずと熱を帯びてくる。濡れた指で弾かれ、上半身がびくびくと揺れた。
「っは……」
ひっ、と息をつめて腰が上がる。びくんと大きく揺れると、下着の中に精を放っていた。どぷどぷと溢れるそれは止まらずに下着を汚していく。
「明日洗わなきゃ……」
下着の中を一望して、ふっとため息をつく。何してんだろ、俺。
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