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第22話 ライバルに嫉妬しすぎてるこの気持ちは何? ※

「僕はいつだって幸太郎さんのためを思って動いてる。外野の君にとやかく言われる筋合いはない。それに知ってる? 幸太郎さんは僕にもお手付きしてるんだよ。酔っ払ったときだけどね。君だけが特別じゃないから、そこのところ勘違いしない方がいいよ」  言いたいことは全て言い切ったと言わんばかりの満足げな顔で茜は部屋に戻っていく。その後ろ姿を呆然としながら眺めていた。  茜にもしてるんだ……なんだ、俺にだけしてるんじゃないのか。  なぜかそこの言葉に引っかかりどんよりと気分が重くなる。オーナーが帰ってきてフロントを交代してからも気持ちは晴れなかった。別に自分が特別だと勘違いしていたわけではないが、寂しさが胸を覆う。  約束通り夜更けに峰山が保の部屋にやってきた。手にはトランプを携えている。保の気持ちなど知らない峰山はいつものようにあぐらをかいて布団の上に座り込んだ。時刻は午後十時。窓から流れる夜の空気が二人を包む。 「さぁ、最初はババ抜きだ。ルールは簡単だ」  丁寧に説明してくれる峰山の声が遠い。保はぼんやりとしながらそれを聞いていた。もやもやとした膜が心を覆っているようだった。体の芯が底冷えしていく。 「……保。茜に何か言われたのか?」  黙々とババ抜きをしていた保に峰山が聞く。保はふっと笑いが込み上げてきた。 「別に。なんでもない。次、峰山さんの番だよ」  トランプを広げて峰山がカードを取るのを待つ。すると一瞬眉を顰めたかと思えば、峰山は持っていたトランプを床に落とした。その手で保のトランプを全てもぎ取る。 「何するんだよっ」 「それはこっちの台詞だ。嘘ついてもバレてるからな。茜のやつ余計なことを言ったんだな。言ってみろ。今度ばかりは俺が叱ってやる」  真剣な瞳で顔を覗き込まれてしまい、保は目線を逸らした。すかさず頬を掴まれる。力づくで目を合わせられた。 「保。言ってみろ。言わなきゃ伝わらない」  ぐっと唇を噛み締める。自分の気持ちを言葉にしてしまったら今の心地よい関係が崩れ去ってしまいそうで怖かった。いろんな言い訳が頭をよぎる。 「だから何でもないって……」  もごもごと呟くと、聞こえないと叱咤される。峰山の手を振り払い二、三歩後ろに下がった。保の悩みの種である峰山本人は何も心当たりはないようで、それが無性にむかついてきた。 「保。ちゃんと言え」 「……峰山さんのせいだ。あんたが俺なんかに構うからいけないんだ」  保のか細い声は峰山に届いたらしい。眉間にシワを寄せて峰山は首を傾げる。 「どういうことだ?」 「茜から聞いたんだ。あんたあいつにも俺にやったみたいなことをしてたんだろっ」 「……それで? 保は何が嫌なの」  飄々とした表情で峰山は保に顔を近づける。その距離が普段よりも近くて、ぐっと息を止めた。 「っだから、誰でもいいってことだろ。茜でも、俺でも、どっちでもいいんだろ」  自分で言っていてよくわからなくなってくる。何を言ってるんだろう俺は。その間も峰山は瞬きもせずこちらを見ている。一人だけ焦っているみたいで恥ずかしかった。 「……へぇ、茜に嫉妬してるんだ」  沈黙の後、峰山がにやにやと笑いながら言ってきた。 「茜が教えてくれたんだよ。あんたが酔っ払ったときに茜にも手をつけたって」  ふうん、と興味深そうに峰山が頷く。どうしてこんなに落ち着いてられるんだこいつは。 「保、怒ってる?」  悪びれもしないように峰山が聞く。保はむすっとして顔を背けた。しかし、ふと気づく。どうして自分は怒っているのだろうと。 「保、こっち見て」  すぐ後ろで懇願するような声が聞こえる。しかし振り向く気はない。保は完全に峰山に背を向けて腕を組んだ。自分でもなぜこんなに怒りが湧いてくるのかわからない。 「言ってごらんよ。何がそんなに嫌なの?」  保の沈黙を峰山が破ろうと必死になって聞いてくる。かなり焦っているようだった。気分が良かった。俺がこいつを焦らせているという状況がこの上なく嬉しかった。 「保。もしかしてヤキモチ焼いてるのか」  その一言でバッと後ろを振り向いてしまった。こいつ今なんて言った? 俺がヤキモチを焼いてるだと? 「やっと見てくれた」  ほっと安心したように峰山が呟く。保は耳まで真っ赤になり首を振った。ありえない、そんなヤキモチを焼くなんてこと。 「そうなんだ。へぇ」  そう言うと峰山はぽりぽりと頬をかいた。なぜ照れているんだこいつは。保は目を見張る。 「そうかぁ」  くるくると毛先を指に巻きつけながら峰山が笑う。初めて見た満面の笑みだった。 「そんなふうにさせたのは俺だもんな」  なにかを決心したように峰山が顎に手をやって呟く。保は峰山の動向をうかがった。 「悪かったよ保。今度からは保にしかしないから」 「あ、うん……」  話が別の方向にいってしまったような気がしたが曖昧に頷く。しかし、気分がいい。峰山を独占できることに喜んでいると、おもむろに峰山が立ち上がった。あぐらをかいて座る保の後ろに回り込み、そっと目元に手をかぶせてくる。視界を奪われた保はその姿勢のまま固まる。 「素直に答えてくれた保にはご褒美をやらないとな」  妖しい声が頭の中に入り込む。一番上まで締めていたパジャマをぱちんぱちんと外される。驚きで動けない保をよそに、峰山は慣れた手つきで服を脱がしていく。梅雨なので湿気対策のために肌着は着ていなかった。部屋の空気に触れて少し鳥肌がたつ。 「保。いい子にしてて」  ふわふわと体が浮いてしまうような心地だった。視界が真っ暗なせいで、峰山の声と手だけが唯一の感覚だった。それと、峰山の体から放たれる芳しい匂い。それに恍惚としていると、不意に耳に唇を押し当てられた。そのまま吸われ、耳の中にまで舌が侵入してくる。ぴちゃぴちゃと熱い音を立てて耳の中を犯される。峰山の呼吸を直に聞いてしまって胸がどくどくと激しく鳴る。 「そう。いい子」  目隠しをしていない方の手で頭を撫でられる。それが気持ちよくて頭が動かなくなった。峰山の胸にもたれるようにして体の力を抜く。ぴんと張り詰めた乳頭に指が触れる。いつもより背中がぞわぞわとし始め、腰が震えた。保は胸を突き出しながら峰山の愛撫に応える。先端を摘まれ、弾かれたそこは今にも赤々と熟れているに違いない。

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