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第26話 伝えたい想いがあるから ※
それから最後の舞台に向けて峰山たちは忙しなく動いていて声をかけることができなかった。朝も昼も夜も常にミーティングや稽古、リハーサルで走り回っているのだ。その間を割って入れるほど保も子どもじゃない。
そしてあれよあれよというまに最終公演の日を迎えてしまった。峰山たちが発つ2日前の夜公演が最後の舞台だった。客入りも前回よりもさらに増えて立ち見の客がひしめくくらいに繁盛していた。そんな客たちを誘導しながら保は舞台で舞う峰山を見つめていた。気づけばあまりにも遠くて、あまりにも近い存在になっていた。
公演後、客たちを外に誘導しながら保は心ここにあらずといったふうで心臓が飛び出してしまいそうなほど緊張していた。この後峰山に返事を伝えるつもりだった。何度も何度も頭の中で考えた返事をちゃんと伝えられるのか不安になる。
「こんなところにいたんだ」
額に汗をかいた茜が玄関までやってきた。仕事を終えたらしくこれから夜食を食べにいくところらしい。
「お疲れ様です」
「幸太郎さんがあんたのこと呼んでたよ。楽屋には今一人だと思うから」
じゃあ、と言って小走りで食堂へ向かっていってしまった。一人玄関に残された保は深呼吸をしながら楽屋に向かう廊下を進んでいった。一歩踏み出すごとに心臓がどくんと跳ね上がる。喉はからからに乾いていて、手足の感覚はない。
楽屋の襖を叩くと「はい」と凛とした声が聞こえた。すっと開いて中に入る。白粉を洗い流した素顔の峰山がそこにはいた。肌着一枚であぐらをかいて座っている。よほど汗をかいたのか肌着が肌に密着していた。保は正座をして峰山の前に座り込む。顔を合わせられないでいると、向こうから話を振ってくれた。
「返事は決まったか?」
「うん」
「じゃあ教えてよ」
三つほど数えてから保が口を開いた。
「……き」
「聞こえない。もう一度言って」
「好きだ……」
峰山はぴたりと動きを止めた。しかしその直後、ふわりと花が開いたような笑顔を見せた。
「じゃあ俺の恋人になってくれるんだ」
きらきらと瞳の中が輝いている。こんなに喜んでくれるとは思ってもいなくて保はうんと小さく頷いた。頭をくしゃりと撫でられる。そしてその手が頬に添えられた。ゆっくりと峰山の顔が近づいてくる。目を伏せながら静かに唇に近づいてくる。保もそれに倣うようにして目を閉じた。ふにっとした感触が唇に伝わる。
「……」
そのままお互い無言で唇をむさぼるように合わせた。いつのまにか保の両手は峰山にとられている。世に言う恋人繋ぎの状態で指を絡められる。その手から伝わる熱があたたかくて、保は安心して身を任せた。
「っ……ん」
保の声だけが狭い楽屋の中に響く。歯の間からぬるりと舌が侵入してきて保の口内を蹂躙する。息継ぎする間も無く口を奪われて、保は肩を大きく揺らした。繋いでいた手が解かれて、保の後頭部を包み込むように支えてくれる。峰山の舌使いに必死になって応えていると、ようやく口を離してくれた。
「キス上手になったね」
俺のおかげかなと笑って峰山が乱れた髪を直してくれる。保は薄ぼんやりとした視界の中にいる峰山を見つめていた。
「そんなに見つめられたら手加減できない」
そのままゆっくりと床に押し倒されて唇を塞がれる。二人で身を寄せ合って絡み合う。今まで感じたことがないほどの快感に保の体は驚いていた。キスひとつでぐずぐずにされていく体を必死になって抱きしめる。自分がどこか遠くに飛んでいってしまいそうで怖かった。
「続きは俺の部屋でしよう」
こつんとおでこを合わせて囁かれ保はこくこくと頷いた。しかし腰が抜けたようになってしまい一人で立つことができない。
「おぶっていくよ」
宣言通り背中におぶわれて廊下を進んでいく。道中誰にも会わなかったのは幸運だった。
「今布団敷くから」
これから起こるであろう生々しいシーンを予想して今にも鼻血が垂れそうになるのを必死で耐える。こういう大事なときはちゃんとしたかった。
「おいで」
布団の上で膝立ちになる峰山の腕の中にすっぽりと収まると、そのまま優しく抱き止められた。ゆっくりと楽しむような手つきで峰山が保の体に触れてくる。峰山の汗ばんだ胸に頬を当てると、どくどくという心音が聞こえてきた。峰山も緊張しているんだとわかると保の固くなった体が解れる。
「……も、いいよ」
髪の先から鼻の先、指にまでキスの雨を降らせてくる峰山にそう伝えると「わかったよ」と眉を寄せて渋々体を離してくれた。しかし、すぐに布団に押し倒され保は目を回す。天井を見上げながら体を弄られる感覚に震えていた。峰山の手つきが優しくて触れたところから火花が散るように熱くなる。
「ちゃんと気持ちよくしてやるから」
いつのまに手に取ったのかローションを手のひらで温め始めると、保のハーフパンツを口でずり下ろしてきた。下半身が露わになり保は足を閉じる。その間に割って入ってきて、ぬるぬるとした液体を後ろに塗られた。初めて触れられるそこはまだ鈍感で冷たさしか感じない。
「……う……あっ……」
着ていた浴衣をはだけさせられて、直に胸を舐められる。胸の飾りを弾かれて腰がぴくりと反応してしまう。峰山は真剣な顔で保の体を解していく。
「少し力抜けたかな」
じんわりとこめかみに汗をかく峰山が大きく息を吐く。汗だくになってまで保の緊張を解してくれた峰山に感謝しながら、保は峰山の肩に手を回した。
「お願いします……」
「その言い方ずるいよ」
ふっと耳元で笑うと峰山は保の蕾に指をくるくると撫でつけてきた。次第に中指を窄まりに挿入され体の奥がひくりと震えた。保は慣れない感覚に体が浮きそうになるのを必死に耐える。あれよあれよという間に保は峰山の指を三本も飲み込んでいた。濡らされているからか痛みは感じなかった。ただお腹の当たりが苦しくなっていて、早く抜いて欲しかった。ずるりと峰山の指が抜かれるとほっと一息つくことができた。
「ここからが本番だよ」
「っあ……」
峰山の言った通り指以上に太いものが保の後孔を穿つ。ゆっくりと静かに侵入してくるものに息が詰まる。峰山との距離がぐっと近くなって、保はその唇に自ら吸い付いた。峰山はやや驚いたように目を丸くするとすぐにその口を塞いだ。水音が二人の間で生まれる。その音に耳が犯されてしまいそうで保はきゅっと目をつぶった。
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