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随伴任務の夜明け:侵食される三日間と完全補給

1. 指令:三日間の空白 「……三日間、他基地へ研修。……事実上の、隔離指令ですね」 リビングのソファ。 直人の口から出た言葉を、レオンは冷徹なまでの静寂で受け止めた。 しかし、握りしめた拳は微かに震えている。 「大げさなんだよ。たった三日だ。若手に新機体の整備を叩き込んでくるだけだ。18時には帰れるだろうし、すぐだよ」 直人はビールを煽りながら笑ったが、レオンにとっては、それは魂の供給源を断たれる宣告に等しかった。 2. 飢餓:塩っぱい残り香と氷の三日間 直人が発ったその瞬間から、レオンは「氷の貴公子」を超えた何かに変貌した。 基地内での彼は、周囲が戦慄するほどのピリ付いた空気を纏っていた。 無駄な会話を一切拒絶し、狂ったような速度で残業を詰め込み、 三日分の仕事を二日で終わらせる。 すべては、直人が帰ってくる「三日目の夜」を、一秒も無駄にしないため。 しかし、一歩官舎へ戻れば、そこには亡霊のような男がいた。 「……直人さん……、……っ、……あぁ……」 レオンは、直人が脱ぎ捨てた部屋着を抱きしめ、ソファに沈む。 襟元に残る、直人の体温と、男らしい汗の混じった「直人の匂い」。 それを肺の奥まで吸い込み、正気を保とうとする。 だが、繊維に残る冷えた匂いでは、レオンの乾ききった心は満たされない。 「……早く。……早く帰ってきてください、直人さん……」 3. 咆哮:深夜二時の捕食 三日目、18時。 レオンは完璧な身なりで、玄関の暗がりに座り込んでいた。 しかし、約束の時間は無慈悲に過ぎる。 20時、22時、日付が変わる。 連絡の一つもない。 事故か、それとも他の誰かに……? 嫉妬と焦燥が、レオンを暗闇の中で獣へと変えていく。 深夜0時。 ようやく、鍵が回る音がした。 重い扉が開いた瞬間、レオンの全細胞が咆哮した。 「……っ!? うお、レオン……! お前、何で電気も点けずに……」 直人がスイッチに触れるより早く、レオンが背後から襲いかかった。 壁に押し付け、万力の力でその身体を拘束する。 「……遅い。……遅すぎます、直人さん……っ!!」 「……っ、悪りぃ、研修先の機体に不具合が出て、放っておけなくて……おい、レオン、痛ぇよ!」 「そんなこと、僕には関係ない……! あなたが、僕を独りにした、その時間の代償を……今すぐ、ここで支払ってもらいます」 レオンは直人の首筋に深く、牙を立てるように吸い付いた。 「汚いからシャワーを」 という言葉を荒々しい接吻で塞ぐ。 ツナギの襟元を引き裂き、三日間待ち焦がれた「本物の熱」に、執拗に舌を這わせた。 「汚い? ……とんでもない。これが、僕が死ぬ思いで待ち焦がれていた、あなたの匂いだ……。汗も、油も、全部、僕が飲み干してあげます……っ」 床に押し倒し、レオンは直人の最深部へと無理やり侵入した。 「……っ!!! あ、ぁぁぁ……っ、レオンっ!!」 「直人さん、もっと……、僕の名前を呼んで……。三日分、僕を狂わせた罰です。……壊れるまで、愛してあげます……!」 混ざり合う、汗と油、そして濃厚な愛の匂い。 レオンは、絶頂の瞬間、 直人の耳元で何度も、何度も、 その名前を呪文のように呼び続けた。 「……直人さん、……直人さん、愛しています……」 レオンの声は熱を帯び、直人の耳元で何度も繰り返されます。 その一言ごとに、レオンの熱い吐息が直人の濡れた肌を撫で、 快感の残滓を無理やり引き戻す。 「……あ、……っ、レオン……もう、勘弁、……しろ……っ」 直人はシーツを掴み、快感のあまり弓なりに身体を反らせました。 三日間の空白を埋めるかのようなレオンの愛撫は、 執拗で、そしてあまりにも生々しい。 レオンの大きな手が、直人の汗ばんだ腹筋から、 快感に震える腿へと滑り込みむ。 指先が直人の敏感な場所をなぞるたび、 直人の喉からは耐えきれないような、掠れた喘ぎが漏れ出す。 「……っ!! あ、ぁ……っ! レオン、お前、……熱すぎ、……っ」 「熱いのは、あなたが僕を三日間も独りにしたからです。……直人さんのここも、こんなに僕を欲しがっている……。ほら、聞こえますか? あなたの、こんなに淫らな声……」 レオンは、直人の耳たぶを甘噛みしながら、 再び自分の硬い楔を、直人の最深部へと押し当てました。 「……っ!!! あ、……ぁぁぁ……っ!」 直人の瞳が、快感で白濁するように潤みました。 レオンは、直人が悶え、自分を拒むこともできずに縋り付いてくる姿を、 その瞳に焼き付けます。 整備士として鍛え上げられた直人の身体が、 レオンの猛烈な突き上げに翻弄され、情欲の海へと沈んでいく。 「……見てください、直人さん。……あなたは今、僕だけの色に染まっている……。……愛しています。……死ぬまで、僕の中に閉じ込めておきたい……」 「……っ、バカ……レオン……っ、……あ、……ぁぁぁぁっ!!」 混ざり合う、汗の塩気と油の匂い。 そして、二人の間から立ち上る、濃密で、むせ返るような愛の香り。 レオンは、悶え、果てる直人の姿を、 その腕の中で永遠に閉じ込めるかのように、 さらに深く、強く、その身体を抱き潰し続けた。 4. 宣言:随伴任務と完全補給 翌朝。 官舎を包む爽やかな空気の中、 直人は腰の重みに顔を顰めながら、レオンが淹れた茶を啜っていた。 「……で。昨日は何であんな時間になったんですか。18時に帰ると、あなたは約束したはずです」 レオンは、エプロン姿で至って冷静に問いかける。 昨夜の獣はどこへやら、その瞳には理理とした光が戻っていた。 「……だから、機体の不具合だって。……悪かったよ、連絡もできなくて」 「……そうですか。不具合。……直人さん、決めました」 レオンは直人の背後から近づき、その逞しい肩に顎を乗せた。 「次の研修や出張……。僕は有給を取って、あなたについていきます。ストーカーではありません、『随伴任務』です。あなたの影として、空気として、僕はあなたの傍を離れません」 「……はぁ? お前、マジで言ってんのか? ……うわ、引くわ。マジで引く……」 「引いても無駄です。……それから、今日は元々あなたの公休ですが、僕も休みを合わせてあります。残務もすべて終わらせてきました。……今日は一日、僕があなたを『補給』することに決めてあります」 レオンは直人の首筋に残った、自分だけの烙印(キスマーク)に優しく唇を寄せた。 「……今日は一歩も、外へは出しません。しっかり栄養を摂っておいてくださいね、直人さん。……午後からは、昨夜よりももっと、濃密な『メンテナンス』が待っていますから」 「……っ、……全くな、とんだストーカーだな……」 直人は溜息をつきながらも、自分に縋り付くレオンの熱を拒まなかった。 横須賀の青空の下。 二人の歪で、砂を吐くほど甘い共依存は、 また新しい、誰にも邪魔できない時間を刻み始めていた。 あとがき 今回は、直人の不在に耐えきれず「猛獣」と化したレオンと、 研修先でのトラブルで図らずも彼を放置してしまった直人の、 温度感の高い夜を描かせていただきました。 三日間、直人の残り香だけで正気を保っていたレオンが、 深夜0時に現れた「本物の熱」に理性を吹き飛ばす姿……。 普段のエリート幹部としての仮面が剥がれ落ち、 ただの愛に飢えた男として直人を貪る生々しさが伝わっていれば幸いです。 翌朝、爽やかな顔をして 「次からはついていく」と宣言するレオンの重すぎる愛と、 それに呆れつつも「補給」を受け入れる直人の、 歪で、けれど確かな絆を感じる姿を楽しんでもらえたら幸いです。

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