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第5話 それは責任転嫁だろ※

「……お待たせ。ビール飲む?」 「待ってました! じゃあ、グラス一杯だけ。半分こしましょ」  シャワーを浴びて一応後ろの準備まで済ませ、しっかり髪を乾かしてからリビングのドアを開けた。寝間着は薄手の長袖シャツの上に薄手のパーカーを羽織っていて、下はスウェットパンツを履いている。普段通りだ。下瀬はテレビに向けていた顔を俺に向け、パッとソファから立ち上がり笑みを浮かべた。 「そんな少なくていーの?」 「眠くなりたくないんで、嗜む程度にしときます」  冷蔵庫に向かいビールを取り出していると、あっという間に下瀬が隣に寄ってきて、後ろから顔を覗き込まれる。 「……あ、そう。じゃあビアグラス出して。そっち」 「はーい」  鼓動がバクバクしていることに気付かれたくなくて、素っ気なく返事する。下瀬が吊り戸棚からビアグラスをふたつ取り出し、俺は缶ビールを一本手に持ちソファに向かった。  ソファに隣り合って座り、ローテーブルにグラスを置く。缶ビールのプルタブを開けるとプシュッと炭酸が抜ける音が立った。トクトクとグラスに黄金色のビールを注ぎ、泡込みでちょうど良く二つのグラスがいっぱいになる。 「新記録達成おめでと。乾杯」 「あざっす! 上条さんも、十八件目獲得おめでとうございます!」  カツンと軽くグラスを合わせて乾杯する。下瀬は頬を緩め、下心なんて感じさせない懐っこい笑みを浮かべた。こんなに可愛い部下が俺のことを好きで、今からエロいことをしようとしているなんて信じられない。 「くぅーっ! やっぱ仕事終わりのビールは格別っすね」 「秒で消えたじゃん。やっぱグラス半分じゃ足りないんじゃねーの?」  グラスの半分ほどまでぐびっと喉にビールを流し込み、一気に飲み干したらしい下瀬を呆れ顔で見遣る。下瀬はテーブルにグラスを置き、ずいと身を乗り出して揶揄うように口角を上げた。 「今日はやめときまーす。上条さんもこんだけにして。明日、酔っ払って覚えてないとか言われたくないんで」 「……下瀬、案外意地悪いのな。逃げ道残してくんないの?」 「意地悪は嫌いですか?」 「……別に? 営業マンだし、意地汚いくらいでいーんじゃね」  残りのビールを飲み干し、コンとグラスをテーブルに置いて下瀬を向いた。 「そっか。なら良かったです」  下瀬の顔がふっと近付く。誘いをいなさず乗ったのは俺の方。口唇が触れて、求めるように押し込まれた舌を咥内に迎え入れる。 「ん……んぅ……ン……はぁっ……」  絡み付く舌に舌を絡め返して、キスを仕返す。がっつくのも気恥ずかしいけど、下瀬に押されっぱなしというのもなんだか癪だ。でもグイグイ行って引かれるのも嫌だ。こいつノンケみたいなもんだし。そんな迷いがあれば押し負けて、背中が後ろに倒れてく。 「ね、ベッド行きましょ」 「……マジでやんの?」 「マジのマジ、大マジです」  下瀬を見上げて訊くとマジの顔で見下ろされ、今夜は後戻り出来ないと知る。マジでやんのかぁ、と思っていると、ふっと小さく笑われた。 「ビビんないでいーっすよ。上条さんが嫌なこと絶対しないから」  上司相手に生意気な口を聞くやつだ。ふんと鼻を鳴らして口を尖らせた。 「……嫌じゃないし、ビビってねーし。見くびんな」 「見くびってなんか無いっすよ。なら良かった」  押し倒されたソファから腰を上げて立ち上がる。下瀬も俺に続いてぴょんと立ち上がった。 「行こ」  と言って手を引くと「はーい」と伸ばした緩い返事が返ってくる。嬉しげな声が擽ったい。寝室のドアを開け、下瀬を中に招き入れた。ドアすぐそこの壁に付いたスイッチをパチンと入れて明かりを付ける。 「わー、上条さんの部屋、寝室もおっしゃれー。流石インテリアコーディネーター」  部屋の中は、ドアを開けた右手前の壁にデスクと姿見。右斜め前方壁際にダブルベッド、壁際角にスタンドライト、ベッドの横にサイドテーブル。左側にウォークインクローゼット、って感じ。シンプルなものだ。 「インテリアコーディネーターくらいお前だってちゃんと勉強すりゃ取れる。普段から図面描いてんだし。資格取れ資格、無資格大罪だぞ。それよりまず宅建な」 「うえー、こんな時くらい仕事の話しないでくださいよぉ。俺はベッドが見える位置に鏡があんのエッチですねとかそういう話がしたいです……」 「そういう用途で置いてあるわけじゃねーから」  気恥ずかしさにいつも通りの調子で話しながらベッドに向かい、話しながらスタンドライトの明かりを付けた。代わりにリモコンで寝室の明かりを消す。オレンジ色の明かりがベッド周りだけ柔らかく照らした。寝転ぶのもどうよと思いひとまずベッドに腰掛けると、ちょこんと下瀬が隣に座る。 「上条さん、俺のとこ座ってください」 「なに、どういうこと?」  下瀬はポンポンと自身の膝を叩いて俺に笑みを向ける。意図が分かりかね、小首を傾げつつ腰を浮かせた。横から手が伸びてきて誘導され、両足を軽く開けて深く座った下瀬の太ももの間にすっぽりと腰が収まる。 「ほら、こうして見るとエッチですねって話」 「そのくだらねー話まだ続ける気かよ……ん……ンぅ……」  正面の壁に鏡。背後に下瀬。横から覗き込む下瀬を呆れ顔で向くと、後ろから抱き締められた状態でキスされた。舌に舌が絡み付く。キスに気を取られているうち胸元辺りまで下げていたパーカーのジッパーを全部下ろされ開かれて、下に着た薄いシャツの上から胸元を両手でそっと撫で触られた。すぐさま胸の突起が刺激に反応して固くなる。 「ひゃ……あっ……!」 「服の上から弄るの好きですか? 事務所でもそうしてたでしょ」 「ん……好き……あっ、ン……ッ」  キスの合間に問い掛けられ、素直に答える。見られていたのだから否定したって仕方ない。手のひら全体で胸元を弄られ、ピンと勃ってしまった乳首を親指で弾かれる。 「服の上からと、直接と、どっちが好きですか? どういう風に触られんのが好き?」 「んン……ッ、べつに、どっちだって、いい……」  ちゅっ、ちゅうっ、と音を立てながら口唇を吸われて、その間も胸元を弄る手はそのまんま。キスも乳首も気持ち良くて、自然と腰が揺れ、左右の太腿を擦り付けて身じろぐ。 「上条さん、足がもじもじしてる。俺にお尻擦り付けちゃって、かわいーですね」 「そういうの、言わなくて良いって……っ」 「嫌ですか? でも、すっごい可愛いですよ。ほら、上条さんも見て」  舌が離れて、つうっと互いの口唇の間に糸が引く。顎でふっと正面を示されて反射的に正面を向くと、鏡の中の俺と目が合った。すっかり蕩かされてしまった自分の顔を見てかあっと顔が熱くなる。 「ね、可愛いでしょ? ちゃんと見て」 「……やっぱお前、意地悪ぃ」 「意地悪で良いって言ったじゃないっすかぁ。嫌いじゃないでしょ?」 「嫌い、では、ないけどさぁ……っン……!」  服の上からカリッと爪で乳首を擦られ、思わず首がのけ反った。お喋りの間もキスの間も刺激され続け、身体がびくびく震えて止まらない。服の下に両手が潜り込み、するするとシャツをたくし上げながら直接胸を刺激していく。 「わ、上条さんの乳首、綺麗なピンクですね。ちっちゃいのにぷっくりしててかわいー」 「んっ……ひぁっ、んンッ……!」  下瀬は手の甲でシャツをたくし上げたまま固定して、上半身が露わにされたまま乳首を指先でくりくりと弄られる。焦れったい甘い刺激に下半身も既に反応していて、スウェットパンツの前が張ってしまっている。尻に当たる感触から、下瀬のそれも勃ち上がっていることが分かる。こいつもちゃんと興奮してるんだ、と安心すると共に、身体が疼いてもっと刺激が欲しくなる。下瀬の太ももを手のひらですりっと撫でる。 「きもちーですか?」 「んー……きもちい、けど……」 「けど、なんですか?」  揶揄う口調で笑みを向けられて口を尖らせる。 「おい、わかるだろ」 「えー、わかんないですよ。俺、宅建もインテリアコーディネーターも持ってないしポンコツなんでー」  笑いながらわざとらしく口を尖らせ返された。こんな会話の間も弄られるのは胸元だけ。 「……FP三級持ってんじゃん」 「合格率八十五パーのね。でも俺、上条さんほど頭良くないけど、空気読むのとか顔色読むのは得意なんです。嫌なことはしないって最初に言いましたよね。上条さんって、焦らされるのとか、虐められるの好きでしょ?」  苦し紛れに資格を上げてみたもののさらりと流され、悪戯っぽい笑みを向けられる。実際図星なのだから、ぐうの音も出ない。 「それに俺、何時間でもずーっと乳首弄り倒すって言ったし。俺の手は二本しか無いんで、他に触りたいところがあったら自分で触ってくださーい」 「……お前、結構良い性格してんな……んんっ……」 「えへへ、それほどでも。上条さんの元で十ヶ月学ばせていただいた成果です」 「褒めてねえし……俺が、性格悪いって……っ言ってんのか……あっ!」  刺激に反応して声を上げてしまいながらも、どうにか下瀬に言い返す。懐っこい笑みを浮かべているくせ、意地が悪い。意地悪なのは好きだけど、下瀬に意地悪されるのはどうも調子が狂う。 「そーんな訳ないじゃないっすか。上条さんは俺らにとって救世主だし聖母です。ほら、触って良いですよ。気持ち良くなってるとこ、俺に見せて。脱ぐとこまでは手伝いますから」 「んっ……はぁっ……クソッ……じゃあ、お前も脱げ……あっ、あー……ッ!」  左手の指先の動きが早くなり、乳首を爪と指の腹で何度と弾かれる。びくびくっと身体が震え、身体の内側がきゅんとした。射精こそしないものの、絶頂感で腰がひくひくする。右手がスウェットパンツの腰元に引っ掛けられて、ひくつく腰元から下着ごとパンツをずり下ろされた。 「上条さんの声、かーわい。下着濡れちゃってますね。俺もべたべたかもー、脱いでくっつけたらお尻濡らしちゃいそう。我慢してくださいね」 「はぁっ……脱がしてやるから、立て……っ」 「やった、上条さんが脱がせてくれるんですか? 脱がせてくださーい」  ふらふらしながら床にへたり込み、へらへらしている下瀬を立たせてスウェットパンツの腰元に両手を掛ける。パンツの前はしっかり張っていて、尻で感じ取っていた通りかなりデカそうだ。いまいち力の入らない腕で下着ごとパンツをずり下ろしてやると、ガチガチに勃起したペニスが目の前に現れる。 「デッ……カ……引くわ……」 「ええーっ、引かないでくださいよお! デカくなったの上条さんがエロいせいっすよ?」 「それは責任転嫁だろ……」  自己申告通り、下瀬の亀頭は先走りで濡れている。部屋に隠してあるディルドよりデカい。流石帰国子女、ハーフじゃないけど。こんなもん擦り付けられたら我慢出来る気がしない。 「立ったついでに立ってしましょーよ。鏡の真ん前ならもっとよく見えるでしょ」 「あ゙⁉ はっ⁉ ちょっ……お前、そういうのって付き合って暫く経ってからマンネリ防止にするんじゃないの?」  まあ嫌いではないけど!  と内心続けて叫びつつ、手を引っ張られてよろけながら向かいの鏡前へと連れられた。鏡側の壁の向こう側はウチのリビングだ。壁ドンされることはないだろう。 「今日アピールしとかなきゃ次があるか分かんない訳じゃないっすか。上条さんいつも『一度のチャンスでしっかりアピールしてモノにしろ』って言うでしょ。だからスタンダードなのより、俺と付き合えばこういうのもいつでも出来ますよってプレゼンした方が良いかなーって」  それは確かに言ってる。住宅営業は反響型。一見のお客様がふらっと見に来たタイミングでどんだけ良さを伝えられるかが大事。一度かもしれないチャンスをモノにして次の約束を取り付けるのが俺たち営業マン。ではあるが。 「あと照れて恥じらいながら流されちゃう上条さんが可愛いから、普通に羞恥プレイしたいなって感じです!」 「~~ッ、下瀬この野郎……ぅあっ、ひゃんっ!」  壁に両手を付けると、身体をぴったり合わせるように後ろから抱き締められてケツに下瀬のデカいそれがぬるっと擦れる。両手をクロスさせて胸を揉みながらぬるぬる擦り付けられて、思わず声を上げ目が蕩けた。鏡の真ん前だと自分の表情もよく分かる。今どんな手付きで触られているのかも、下瀬の表情も。 「上条さん、やっばい。可愛すぎ」 「あっ、ひぅっ、この、ばかぁ……っ」  前も後ろもひくひく疼く。触ってほしくて、挿入してほしくて、突いてほしくて堪らない。眉根に力を入れて恨みがましく鏡越しに下瀬を見ると目が合った。分かるはずなのに、分かってないような笑みを向けられる。 「上条さん、自分で触ってみて。気持ち良くなってるとこ、俺に見せてください。やだ?」 「もう、充分気持ちいから……っあん!」  右手の平が俺の右手の甲に添えられ掴まれて、俺のペニスまで誘導される。自分の手が触れただけで身体がびくっとした。 「ね、自分で握って? そんで、普段してるみたいに動かして。今日、ホントは家でオナニーしようと思ってたでしょ? いつもしてる感じでしてみてください」 「むり、ちから……入んねぇ……んぅ……っ」  後ろから抱き締められたまま、ちゅっ、ちゅうっ、と首筋や耳にキスが落とされていく。わざと音立てやがって、クソ意地悪ぃ。でもこういう意地悪は嫌いじゃなくて、ぞくぞくする。 「じゃあ、手伝います。こうして握って、上下に擦って」 「あっ、ひあっ、あっ、だめっ、出るっ、出ちゃうからぁ……ッ!」  右手の甲を右手の平で包まれて、自分で自分のペニスを握らされる。そのままゆるゆる上下に扱くように動かされ、左手は胸を弄られたまま。片手で立っていられず鏡に頬をくっつけて尻を後ろに突き出すと、下瀬のペニスがぐりぐり当たった。  理想の彼氏は、甘やかしてくれる年上のタチ。セックスはちょっと意地悪。下瀬は甘えただし年下だけど、悪くないってか、かなり好き。あー最悪。同じ職場の部下に手出すとか。手出されてんの俺の方だけど。でも、そんな罪悪感込みで気持ち良い。 「イって良いですよ。イキ顔、俺に見せて」 「んっ、んむっ、んうっ、はあっ、あ……ッ!」  横からひょいと顔を覗き込まれて口付けられる。口唇が塞がれて舌が絡み付き、キスに応えて、下瀬の手に導かれるままあっけなく射精した。鏡やフローリングにびゅるっと精液が飛び散って、綺麗に片付いた部屋が自分の精液でべっとり汚れる。 「はぁっ……んっ……はぁっ……」 「上条さんのイキ顔かーわいい。いっぱい出ましたね? 事務所でオナニーしちゃうくらい溜まってたんすもんね」  最後の一滴まで搾り取るように手を動かされ、ぴゅっ、ぴゅっ、と残りを出し切り、精液がぽたぽたと床に落っこちた。

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