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第8話 ンなことで引かねーよ、別に①
「こんにちは! 藤原ハウスの下瀬です。茂木さま、以前はご来場ありがとうございました! お忙しいところ恐れ入ります。以前お話した際に多摩エリアで土地をお探しとお伺いしましたが、まだお探しでしょうか? 条件に合いそうな土地が新規で売りに出ましたので、ぜひご紹介したくお電話いたしました!」
ここは東京営業所西部エリア、藤原ハウス中央展示場。今日も今日とて事務所の中は騒がしい。いつも通り俺の隣に座っている下瀬は再来場に向けたアポ取りの架電の真っ最中だ。
「――はい、上条です。先ほどは出られずすみません、折り返し有難う御座います。ご自宅の大黒柱の移設工事について確認が取れましたのでそのご報告なのですが、三分ほどお時間宜しいでしょうか?」
と思っていたら俺の方は客からの折り返し。契約顧客や業者への連絡、いつでも社用スマホが手放せない。
それでも本日は割と暇な月曜日。祝日だけど、今日はイベント開催日じゃねーから、ふらっと来場はそう来るこたなく打ち合わせやらの予定が入ってなきゃ時間に自由が効く。
一通り午前の仕事が終わった十二時半頃、電話を終えたところで椅子に座ったまま伸びをして口を開いた。
「俺メシ行くけど行きたい奴居るかー? 休み前だし奢っちゃる」
「はい! ラーメン五郎丸!」
「原却下ー、ニンニクNG。俺十四時から打ち合わせ」
「デミグラ食堂! オムハヤシ!」
「採用。でもお前今日当番日だろが。ハウスハウス、中谷留守番。相田と下瀬は?」
腹ペコ達が即座に挙手してくる。言い出しっぺの中谷は事務所でお留守番だが、デミグラ食堂を採用することにして相田と下瀬に話を振った。
「同行したいです。私はデミオムライスにしようかなー」
「行きたいっすけど、昼のうちにもうちょい架電したいんで止めときます。ワンチャン来場もあるかもだし、年内もう三件マストなんで」
相田は同行希望だが、下瀬の方はまだ働く気らしい。やる気に満ち溢れた目を向けられて、ポンと軽く背を叩いた。
「俺はデミバーグにしよ。下瀬、根詰めんなよ。さっき来場アポ取れてたじゃん。ちゃんと休めな」
「もち休みます! 休日全力で休むために出勤日は頑張んないと!」
「あー、なら良い、うん。頑張れ。頑張ってるお前にはデミグラ食堂でテイクアウトしてきてやる」
分かりやすく休み前で燃えているらしい。明日は休み。俺も同じく。で、先週に続き今夜は下瀬がウチに泊まっていく予定。やる気もヤる気も満々って訳。
「てんちょ〜、俺にもデミグラ食堂食べさせてくださいよ〜」
「わーった、中谷の分も買ってきてやっから。下瀬見習って架電してろ。中谷はオムハヤシだろ、下瀬は?」
眉を八の字に下げて泣きつく中谷を軽くあしらい下瀬に聞く。
「あざす! デミバーグお願いしまっす!」
「りょーかい。良い子で仕事して待ってろ。原、相田、行くぞ」
立ち上がると全員「はーい!」と良い返事をして、留守番二人に「いってらっしゃーい」と見送られた。
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