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第9話 ンなことで引かねーよ、別に②
「なーんか休み明けから下瀬さんむっちゃやる気っすねー。休みめちゃくちゃ楽しみにしてるのも怪し〜、上条さんなんか聞いてます? 俺の推理は、ズバリ彼女が出来たです!」
デミパスタを食べていた原がフォークを置いて、人差し指をビッと立て名探偵よろしく推理を繰り出してくる。少しばかり、ぎくりとした。
「名探偵すな。別に怪しかねーだろ。先週火曜にあいつ休日出勤してて、俺も当番日だから顔合わせたの。あの日東京営業所内で二件上がってたのウチだけで、この調子で東京営業所一位取りてーなって話したから、それで燃えてんじゃねーの。原もチャキチャキ働け。相田もな」
「はい。とりあえず、見込みの一件は年内に決めます! でも、私も彼女でも出来たのかなーって思いました。下瀬さん休み明けから異常に機嫌良いですし」
「やー、先週の休み、俺下瀬とスポラン出掛けたから彼女出来たは無いんじゃね? フツーに年末追い込みかけてんだろ」
隠すよりは言った方が怪しくねーかな、と判断してそう話す。実際『彼女』じゃねーし。俺だし。
「えーっ、スポラン誘って下さいよ!」
「お前は休みガルバのマミちゃんとデートだろ?」
「バチ喧嘩してデート白紙になって一人ロンリネスでしたよぉ。まだむちゃ怒ってるしもう振られそ〜」
「そりゃご愁傷様。別れたらスポラン誘うわ。喧嘩の原因は?」
下瀬から原に話題を逸らし「まあ俺が八割悪いんすけどぉ〜」と語る原の喧嘩の理由を「自分が悪いって理由分かってんならまだ修復出来るって。頭下げて謝ってこい」と流しながら聞いてやる。まあ、俺は上手く修復出来た試しがないけど。
それはさておき、俺がフォローに回ってやれば名探偵達にも気付かれないことだろう。オムハヤシとデミバーグをテイクアウトして事務所に戻り、中谷と下瀬に差し入れてやった。
今日の俺の予定は、午後に二時間ほど打ち合わせ。その後は契約前のお客様相手に完成現場見学会ご案内、からの直帰。下瀬は契約が一件。十三件目だ。その後は事務所でそのまま架電を続けるとのことだった。
十八時三十分頃自宅に到着し、ジャケットを脱いでぼすんとソファに腰を下ろす。私用スマホを取り出し下瀬とのトーク画面を開いた。
『家着いた。まだ事務所?』
ウチは展示場から車で十五分くらいの距離にあって、最寄り駅までは徒歩二十分かかるガチ住宅街。そんな訳で近くのコインパーキングは都内のわりに安く、二十四時間六百円、二十時から八時までは三百円。だからまあ、帰りにそのまま泊まりにくればと言っていた。
『事務所です! けどもう出ます! ラストまで居たら中谷に捕まっちゃいそうだし!』
ポンポンと続けてトークが送られてきて、文面だけでも元気なやっちゃなと目を細める。
『オッケー。俺シャワー浴びるから、適当に鍵開けて入って。鍵ポストの中に入れといた。また後でな』
『了解です! 向かいます! 大好きです!』
半ば押し切られる形で始まったお付き合いも今日で六日目。あいつは寝る前に電話を掛けてきたり、メッセージしてきたり、何らかの手段で宣言通り毎日好きだと俺に言ってくる。可愛いやつだ。それだけやり取りして、シャワーを浴びに浴室へと向かう。きちんとこの後のセックスの準備も済ませ、タオルで髪を拭いていたところ、玄関ドアが開く音が聞こえた。
「お邪魔しまーす」
「おー、お疲れ。ちょい待って、ドライヤーする」
脱衣所のドアを開けて、ひょいと顔を出して出迎える。下瀬はパッと笑みを浮かべて俺の傍に寄ってきた。
「俺乾かして良いっすか?」
「良いっつー前にドライヤー取ってんじゃん」
下瀬は廊下にビジネスバッグを置くと勝手にドライヤーを取り、スイッチをオンにする。背後から温風が髪に当てられた。
「恋人っぽくていーっしょ?」
「まあ、勝手に髪が乾くのは楽で良いわな」
手で髪を梳かれながら髪を乾かされ、擽ったさに笑ってしまう。てか、また鏡の前だし。俺の髪を丁寧に乾かす顔には大好きと書いてあるようで、そりゃ名探偵じゃなくても分かるわなと苦笑する。
「昼メシ食いに行った時さ、休み明けからお前が超ご機嫌で超やる気だから彼女でも出来たんじゃないかって原と相田が疑ってた。こないだの休みは俺とスポラン行ってたぞって言っといたけど」
「まずいっすか? バレちゃうかなあ」
「俺フォローしとくし、とりあえず大丈夫だろ。相手が俺だとかは流石に疑われてねーし。でもお前、顔に出るよなー。好き好きオーラもうちょい隠せる?」
「俺、好き好きオーラは元から出してたと思うんすけど。上条さんが気付かなかっただけで」
「言われてみればそうか? 灯台下暗しだなー」
けらけら笑って言ったところで短い髪があっという間に乾き、ドライヤーのスイッチがオフになる。
「お前もシャワー浴びてこい。腹減ってるだろ? シャワー浴びてる間に適当に作っとくから」
「えっ、まさかの手料理っすか⁉ いーんすか⁉ てか上条さんって自炊するんすか⁉ めっちゃ嬉し〜!」
「ハードル上げんな、マジで適当だぞ。時間ある時はテキトーに軽く作るよ。外食ばっかじゃ偏るからな」
ウキウキの下瀬に呆れて肩を落とし「ジャケット掛けとくから脱げ、さっさと入ってこい」と声を掛けると「はーい!」とご機嫌な返事が返ってくる。ジャケットを預かってさっさと脱衣所を後にした。
ジャケットをハンガーに引っ掛けて部屋着姿でキッチンに立ち、湯を沸かして適当に豚しゃぶ肉を茹でる。茹でる間に豆腐を切って乾燥わかめと一緒に味噌汁にして、冷凍保存しておいた小ネギを散らした。カット野菜に茹でた豚肉を乗っけて、ポン酢とごま油を回し掛ける。速攻豚しゃぶサラダと味噌汁が出来上がり、朝にセットしておいた米をよそえばもう完成。
下瀬の元カノ達はきっと胃袋掴もうと凝った料理でも用意したことだろう。と、ふと頭に過ぎったが、こんくらいのもんで良いだろう。気合入れんのも恥ずい。それに、俺は毎度尽くし過ぎるきらいがあると自覚している。
ここ八年の付き合いを振り返ってみると、ちょっと良い感じになって、好きだって言われてセックスして、付き合う感じになって。俺の方はちょっと好き、からなんとなく始まって、結局俺の方がどっぷり好きになる。
喜ばせてやろうとか頑張っちゃって、美味いメシ作ろうとか張り切っちゃったり。好きになっちゃうんだよなぁ。下瀬のことだって、もうめっちゃ好きだしなぁ。自分が求められると好きになっちゃうつーか。好かれると好きになっちゃうつーか。で、俺の方だけずっと好きなまんまで、振られて。反省を活かしてあんまり頑張らないようにしたいなと思いつつ、でも喜ばせたいとか思っちゃったり。
「うお、良い匂い。もう出来たの? なーに作ってくれたんです?」
「豚しゃぶサラダと味噌汁。と米。適当つったろ」
リビングのドアが開いて、こざっぱりした下瀬が後ろから覗き込んできた。すこぶる簡単なメシだが、下瀬はパッと顔を明るくして目を細める。
「美味そー! あざす! めっちゃ嬉しいっす! 上条さん、めっちゃ忙しいのに自炊まですんのすげぇ」
「まー子どもの頃からメシ作ってたから、慣れだ慣れ。テーブル運んで」
「うっす!」
嬉しげな顔についつい頬が緩んでしまいそうで奥歯を噛んだ。こんなもんでニコニコ喜んでくれんだから、もっと喜ばせてぇーとか思っちゃっても仕方なくね? 学習しねぇー。
「上条さん家って大家族じゃないすか。上三人、下二人居るって聞いてますけど、上条さんがメシ作ってたんすか?」
「や、当番制。年子か二歳差でポンポンとなー。親の方針でちいせー頃から自分のことは自分で出来るようにしろスタイルで家事叩き込まれたわけ」
「俺一人っ子なんで、大家族の生活っていまいち想像付かないっす。兄弟沢山居んの賑やかで楽しそー」
「大変だぞ。プライバシーとかねーし、姉ちゃんはバカこえーし、なんでも兄ちゃんのお下がりばっかだし。勉強見てもらえたりサッカー教えて貰えたりは良かったけど。普通に愛されて育ったと思うけど、俺だけを見てもらえることって全然無かったし」
二人掛けのダイニングテーブルにメシを運びつつ他愛もない会話をする。冷蔵庫から缶ビールを二本取り出して缶のまま卓上に置き、向かい合って席に着いた。
「んじゃ、お疲れ。いただきます」
「いただきまーす!」
互いにプルタブを開け、缶ビールをカツンとくっつけて乾杯した。ビールを喉に流し込み、料理に箸を進めていく。
「めっちゃ美味いっす! 上条さん天才!」
「そりゃどーも。お前んとこは家どんな感じだったの? 親が駐在員で帰国子女っつーのと神奈川育ちの一人っ子とは聞いてるけど、そんくらいしか知らねえ」
「んー、父親の駐在先がロサンゼルスだったんで、物心着く前からスタジアムに野球観に行ってました。母親の方は教育熱心で、帰国後は神奈川のインターナショナルスクール入れられて……家でもずっと英語のDVDが流れてたなー。でも俺野球やりたくて、高校は反対振り切って野球で選んで、まあ、そんな感じっす」
下瀬はカラッと笑って言ったが、一瞬表情が曇って見えた。クソお喋りなくせ、下瀬の家のことはあまり聞いたことがないという時点で気付くべきだったなと自省する。
「俺の思い過ごしだったら良いんだけど、嫌なこと聞いたかも。嫌なことは、無理して答えなくて良いから。ごめんな」
「あー……、と、上条さんが謝ることじゃないんで! なんか、話だけだと育ち良さそうに思えるっしょ? だけど実際は家庭環境悪かったっつーか……両親の仲が最悪で、俺挟んで口論絶えなくて。そんで親とは絶縁みたいなもんで、今はもう連絡取ってないんすよ。だから親のこと話したくないっていうか、話したら引かれるかなみたいな……上条さんちは家族仲良さそうだし……」
「ンなことで引かねーよ、別に。ここは日本一人口が多い東京だぞ。色んなやつが居て当たり前だろ。親と連絡取れよとか口出さねーし、思いもしねーし。俺はお前の親じゃなくて、お前と付き合ってんだからさ。言ってスッキリするなら聞くし、言いたくないなら聞かねーよ。とりあえずメシ食え、メシ」
眉を八の字にした下瀬にそう言って味噌汁を啜る。人の数だけ人生があるものだ。自分と全く同じ人生を辿ってきたやつなんてこの世に一人と居ない。
そりゃ、親や家庭環境が人格形成に与える影響はそれなりにデカいと思う。俺の性格もそうだし。家族仲は良好な方だと思うけど、悪い影響っつーか、自分の悪いところだなと思う部分も家庭環境由来だし。
でも、親がどうだから下瀬が嫌になるとか、そんなことはないとはっきり言える。絶縁しているのならそれこそ関係無いだろう。親が貧乏だろうと金持ちだろうと嫌な奴だろうと、下瀬は下瀬だ。いやまあ、流石に親に莫大な借金があって連帯保証人にされてるとか言われたらちょっと考えさせてって言うかもしんねーけど。
「上条さぁん……大好きです……」
「感動してるとこ悪いけど、親が事業やら投資に失敗して莫大な借金の連帯保証人になってるとかはねーな? あと下瀬自身がやべー宗教ガチ信仰してるとか反社付き合いがあるとか逮捕歴があるとか借金があるとか。それ以外ならいーよ」
大好きと顔に書かれた下瀬の顔を眺めつつ、ビールで喉を潤して小首を傾げ問い掛ける。
「無いです! 下瀬家、親も俺も金には困ってないです! 反社付き合い無し、逮捕歴ありません! 信仰してるのは俺らのメシア上条さんのみです!」
「ならヨシ。メシアじゃねぇけど。気になんのはそんくらいかなー。これまで見てきてお前の人格に問題あるとか思ったことねーし。あ、俺も実家含めて金に困ってねーし、反社とか逮捕歴とか信仰も無いから。まあ他に気になることあったら都度言って」
「聞いたらぜってー妬くから聞くかどうか悩むんすけど、上条さんの元カレとかの話は気になります。男もイケるっぽいってか、俺の前に付き合ってたのは男だろうなってのは去年の忘年会の時気付いたんで分かってたんすけど」
「……俺、お前相手にバイとか言ってた?」
思いがけないタイミングで自分のやらかしに気付かされ、マジで酒止めよ、とビールを飲みながらに思う。
「ハッキリとは言ってなかったっすよ。自分で言うのもなんなんすけど、俺結構勘が良い方なんで分かりました。あん時の上条さん、超可愛くて」
「それさあ、勿体ぶらずにマジで教えてくんねぇ? 何やらかしたのか怖すぎんだけど」
ふっと揶揄うように笑われて、何をしでかしたのかがマジでこえぇ。
「俺しか聞いてなかったから大丈夫。そん時言ってたのは、まー当時の恋人の話とか。クリスマスに一緒に過ごせなかったとか、どこで何してんのかわかんねーとか、浮気してんのかもとか、でも全然好きとか、そういう感じ。あとは実家のご家族の話とかもしてました」
「うーわ……最悪……マジで飲むの止めよ……」
「そっすね、潰れるほど飲むのは心配だし止めてほしいっす。でもこの調子で行けばホントに今年営業所一位取れそうだし、上条さん所長にまた飲め飲め言われそ〜。俺が代わりに飲もっかな」
額に片手を当てて、当時を思い返してみる。クリスマスに俺はどうにか予定空けたのに向こうは急に仕事入ったとか言ってきて地味に落ち込んでたタイミングだ。付き合って一年半で既に色々とすれ違い始めてた頃で、でも俺はまだ全然好きで、全部身に覚えがある話。穴があったら入りてぇ。
「当時の彼氏、上条さんにこんなに愛されて良いなーって思って。俺だったら寂しい思いさせないのにって。付き合えた今だから言えるけど、別れますようにって念じてました! さーせん!」
「いーよ、あん時とっくに倦怠期だったし。つか、なら知ってんじゃん、元カレの話。妬くも何もねーだろ」
両手を合わせて頭を下げられ、軽く流した。箸でメシを口に運び入れ、お互い夕飯を食べ進めていく。
「……やーっぱ上条さんってやっさしい。まあ、なんとなくは酔っ払いの上条さんから聞きましたけどね。未練あったりしないかなーとか、なんで別れたんかなーとか、気になんじゃん」
「あー、前回は……向こうの浮気っつーか。別に俺のこと嫌いになった訳じゃないとか言いながら、女出来てて。結婚するからって振られた感じ? まあ向こう元々はノンケだったし、やっぱ男は俺だけっていうやつで……未練なんかねーよ。思うところがない訳じゃねーけど」
未練は無い。だけど、ふと頭に過ぎることはある。別に、前回だけの話じゃなくて。
「ひっでぇ。思うところって何すか?」
「んー、あー、なんだろ……なんでいつもこうなっちゃうのかなとか。なんで好きって言っといて離れてくんだろとか。俺にダメなとこがあんのかなとか、別れる前になんかありゃ言ってくれりゃ良いのにとか……未練つーか、内省だな、内省」
思ったまま、正直に口にした。せめて、俺に悪いところがあったなら教えてほしい。聞いてみたって、別に四季は悪くないとか、返ってくるのはそんな言葉ばっかりだ。下瀬は目を丸くして、小首を傾げた。
「上条さんに悪いとこなんてなーんも無いと思いますけど。ダメなとこ無いから答えが出ないんじゃないです?」
「会社の上司部下として見える面と、恋人として見える面じゃ違うだろ。付き合い立てホヤホヤだからそー見えんの。どっかしら嫌なとことか出てくるもんだろうし。価値観の違いとか、好きの深度の差とか……これもまあ、なんかあれば言って。直すように善処する」
「嫌なとこなんてあるわけないっすよ。好きなとこしかないもん。逆に、俺に悪いとことかあったら言ってください。直すし。こうして欲しいみたいな希望とかもあれば」
「直してほしいところは何も。希望は、そうだな……」
口を閉じて、少し考える。ひとつ思い付いて、薄く口を開いた。
「……じゃあ、俺のこと一番好きでいて。そんだけ」
呟くようにそう言うと、下瀬はくしゃっと笑った。
「なーんだ、簡単じゃないっすか。ずーっと好きですよ」
「調子良いことばっかり言う。簡単だったら失恋ソングがヒットチャートに上るわけねーだろが」
「嫌なとこがあるから別れんじゃん。もしくは、他にもっと好きな人が出来るとか? 俺、上条さんのこと全部好きだし、上条さんより好きな人出来ないんで、俺から振るっていうのは有り得ないっすね。だから俺が上条さんに好きで居てもらえるようにっつーか、もっと好きになってもらえるように頑張らないと」
下瀬は呑気な笑顔を浮かべて、汁椀を手に取り味噌汁を啜った。そんで「味噌汁超美味いっす! 毎日飲みたい! ご馳走様でした!」とか言うのだから、やっぱり調子の良いことばっかり言うやつだ。呆れて肩を落とし、ふっと小さく息を吐いた。
「じゃあ、まあ、信じておく。ご馳走様でした」
そう言って箸を置き、椅子から腰を上げた。話半分で聞きつつ信じておくことにする。下瀬に信用が無いとかそういうんじゃない。心の底から信じたくとも、こびり付いた不安は中々取れないものだ。
「あっ、俺皿下げます! 洗います!」
「卓上食洗機あるから、皿は洗わなくていーよ。カレーとか汚れ酷い時は予洗いするけど、そう汚れてねーしそのまま入れちゃってオッケ。食洗機使い方教えるわ。あー、鍋入んねーから鍋だけ洗って」
「はーい!」
元気な返事と共に、下瀬が空になった皿や器を抱えてキッチンに付いてくる。どう並べると綺麗に洗えるか教えながら俺が皿を並べて、隣で下瀬が鍋を洗う。食洗機のスイッチを入れたところで下瀬も鍋を洗い終え、水切りラックにポンと鍋を伏せて置いた。
「サンキュ」
「いーえ、こんくらいはさせてください。俺の方こそ、ありがとうございます」
背中にするっと腕が回され、ちゅっと軽く口唇にキスを落とされる。戯れ付いてくるのが可愛くて、頭を撫でながら俺からもキスを仕返した。
「……シャワーもメシも済んだけど、どーする? サブスクで映画でも観る?」
「んー、上条さんがしたいことが良いな。上条さんが観たい映画あれば一緒に観たいし、エッチしたかったらもうエッチすんのも良いし、なんでも」
耳から頬にかけて指先で撫でられて擽ったい。ふっと目を細めて口角を上げた。
「じゃ、俺が教えるから資格の勉強しよ♡ って言ったらやる?」
「…………やりまぁす!」
「やんのかよ。うーそ、冗談。今は店長じゃないから言わねーよ。エッチしよ」
下瀬は悩む顔を浮かべた後に返事したが、まあ冗談。揶揄って笑い、頬にキスをひとつ。
「上条さんがご褒美くれるって言うなら資格勉強ちゃんと出来る気がして。エッチの方がいーっすけど」
「ご褒美やるとは一言も言ってねーし。記憶を歪めんな」
ひょいと肩に担ぐように腰を両手で持たれて抱き上げられ、下瀬が寝室へと足を進める。冗談を交わしながらベッドまで連れられ降ろされて、くつくつ笑いながら服を脱ぎ、下瀬の背に腕を回して口付けた。
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