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第34話 俺の中ではナンバーワン※
「んっ……んぅ……ン……」
暗くした寝室の中、スタンドライトのオレンジ色の灯りがぼんやり光る。静かな部屋で聞こえるのはお互いの呼吸の音と、舌を絡めるキスの濡れた音だけ。覆い被さる乃亜の背中に腕を回して、服着たまんまベッドに背を沈めて、深いキスにただ耽る。
他人と深く付き合うって難しい。分かったような気になっても、結局内心なんて全然分からん。だから言葉で、態度で伝える。
「はぁっ……ん……キスすんの好き」
「知ってますよぉ。チューしてるときの四季さん、目がとろとろんなってかわいーもん。俺もチューすんの好き」
目を細めて頬を撫でられて、俺も釣られて目を細めた。好きだって伝えると、好きが返ってくんのが嬉しい。厚手のトレーナーの裾から手が入ってきて肌をすりっと撫でられる。俺も乃亜の長袖ハイネックの裾から手を入れて、ゴツっとした背骨に指先を這わせた。
体型が、外見が人それぞれ違うみたいに、人間とか男とか大きな分類にラベリングしても全部同じなわけじゃなくて、心だって形が違う。
「なーんすか、ペタペタ触って。擽ってぇ」
「んー、乃亜の背中の感じが好きなの。広くて厚くて、さすが元野球部ーって感じ」
形を確認するようにペタペタ触っていると、くつくつ喉を鳴らして笑われた。
「野球やってて良かったー。野球とサッカーって筋肉の付き方全然違いますよね。四季さん上半身ほっそいもん。足は筋肉付いてっけど、しなやかで長いってーか。モデルっぽいスタイルみたいな」
「あー、サッカーは走り続けっから細身がちだな。俺は乃亜のガッチリしてる体格好き。強そう。実際つえーな」
「えへ、身体だけはスクスク育ったんで。精神が身体に追いついてねー。中学生くらいで止まってんのかも」
「そーか? 年下扱いはしちゃうけど、俺はガキのお守りしてるつもりはねーよ。身体も中身も、大人の男じゃん」
ぺたぺた背中触ってた手でハイネックの裾を掴み、たくし上げて脱がせていく。乃亜も俺に協力して腕を袖から抜いた。すぽんと頭からハイネックを引っこ抜くと、分厚い上半身が目に入る。胸板が厚くて、ガッチリ筋肉付いた腕は利き手の方が明らか太い。
「見た目で好きんなったわけじゃねーけど、やっぱ筋肉の付き方好きだなー。乃亜の努力の成果が身体に出てんだろーなって思うし」
「最近筋トレサボり気味っすけど、四季さんがそう言うなら頑張って鍛えちゃおっかなー。もっと好きんなってほしーもん」
「これ以上惚れさせてどーすんの。ただでさえ毎日もっと好きんなってんのに」
身体の脇に両手を置いて嬉しげに見下ろされ、するっと首の後ろに腕を回した。そのまま引き寄せると、首筋に顔をぐりぐり擦り付けられる。裾からもっぺんトレーナーの中に乃亜の手が入ってきて、するするとトレーナーをたくし上げられていく。
「俺も。好きってカンスト無いのかも。ね、年納めのエッチはどんなのがいーすか?」
たくし上げられただけで脱がされず、喋りながらに乳首を舌で舐め上げられる。パンイチだから外に出ている足も手で撫でられて、身体の上からも下からもゾクゾクした。
「んっ……普通でいーよ、普通で……年の瀬に特殊なプレイとか煩悩すごくね?」
「除夜の鐘で煩悩消すらしーじゃねっすか。正月に特殊なプレイする方が煩悩消えてねーって思いません?」
「まあ〜それもそうか……ぁ……乃亜は、なんかしたいことあんの……っ?」
喋りながらに焦ったい愛撫が続けられ、ジンジン身体が熱くなる。触られていないペニスも愛撫にぴくぴく反応して、パンツの布を持ち上げる。
「俺は絶対コスプレエッチ。今めっちゃ後悔してんすけど、ご実家から制服とかサッカーのユニフォーム持ち帰りたかったっす。俺の知らねー時期の四季さんを感じたいんで」
「それは今できねーやつじゃん……えー、性欲に振り切るならー……目隠しで拘束されるやつやってみたいかも……」
制服はもう無いかもなー。ユニフォームはワンチャンありそう。とか考えつつ、楽しげな顔を眺めながら口にする。
「四季さんが拘束される側ってこと? エッチしてる時とか思うんすけど、四季さん結構マゾっすよねー」
「うっせ。でも、今日はフツーにくっつきてーなー。乃亜のこと見たいし、俺からも触りたいし」
乃亜は胸元から顔を上げ、悪戯っぽく目を細めた。その目を見つめ返して、肩甲骨に添えた手を刈り上げた短いうなじまで這わせて撫でる。
「そー言ってくれんの、うれし。じゃあコスプレエッチと拘束プレイはやっぱ煩悩消さずに年明けてからにしてー……今日はエッチの間顔隠したりせずに、ずーっと目開けて見とく! ってことでどーすか?」
「一種の羞恥プレイじゃね? まあ、いーよ。目瞑らないように善処する」
「やった。じゃあ、ちゃーんと俺のこと見ててくださいね」
そう言うと乃亜は頬を緩ませて、俺のボクサーパンツのウエスト部分に指を引っ掛けた。下着をずり下ろされ、緩く勃ち上がったペニスが乃亜の眼下に曝される。
「四季さんってちんこまで綺麗っすよね。つるっとしててピンク色で、ひくひくしててかわいーっす」
「生々しいレポやめろ……おまえの方からすりゃ、エッチに要らんくない?」
実況されつつ片足ずつ丁寧に下着から足を引き抜かれ、呆れ顔で乃亜を見上げた。乃亜は俺の言葉に「まっさかぁ」とか言って目を丸くする。
「要らんわけねーじゃん。四季さんの全部が好きなの。中身は勿論、外見だって髪の毛一本から爪の先まで。ちんこなんて、俺がどっか触るたびに反応してくれるんだからむっちゃかわいーに決まってる」
「もーやめて……めちゃくちゃ恥ずい……早速負けそ」
目を細めた笑みを向けられて、思わず狼狽えて目が泳いだ。片手で口元を覆ってしまう。なんなら両手で顔を覆いたいところだ。
「えーこれ勝負なんすか? 負けねーっすよ。俺にメロメロんなって恥ずかしがって」
ちゅ、と亀頭にキスしつつ、乃亜はへにゃっと破顔する。気恥ずかしさについつい顔を横向け、腕で目元を覆ってしまった。やっぱり睨めっこは俺の負け。
「……もーダメ、一発KO。超〜メロメロ……」
「勝っちゃった。でも、顔隠しちゃダメっすよー。ちゃんとこっち見て」
ケツに指が這わされると共に、どろっとした感触。指で後ろの穴とその周りにローションを塗り込まれ、二本の指が中に入り込むと同時、ペニスを口に咥え込まれた。
「ひゃっ、あっ、ン、んぅ……ッそれ、だめ……っ!」
「んー、なにがダメ?」
「指挿れながらちんこ吸うの……っあ、やだっ、んン……ッ!」
ナカを指で押され、亀頭をぢゅうっと吸われ、腰がガクガクびくつき震える。身体の奥底、心の中から気持ちよくされて、頭がくらつく。中に捩じ込むようにぐりぐり舌を先端に押し付けられ、ローションを絡めた二本の指がぢゅぽぢゅぽ音を立てながら抜き差しされる。目の前がチカチカして、乃亜の頭を手で押した。
「待っ……だめっ、出るっ、からぁっ……退けって……っ!」
ぐいぐい頭を押してみても離れない。速攻イかされそうで焦てて声を上げると、パチッと乃亜と視線が絡んだ。ちょっと意地悪な顔で笑われて、ナカの良いところを指で撫でられながらペニスをぢゅっと強く吸われる。
「あっ、ひゃうっ、ぁ、あー……ッ!」
抵抗むなしく我慢も出来ず、善がらされるまんま腰がガクつく。気付いた時には射精させられていた。
「はぁっ……あっ……ばか、退けって言ったのに……不味いだろ……」
ごくん、と喉が鳴る音が微かに聞こえる。面白そうに笑って『べ』と出された舌にはもう何も残ってなくて、全部飲み込まれたことを知らされた。
「不味くねっすよ。まろやかな味した」
「食レポすな。次は俺が上の口でも下の口でも精液飲んでやっから、さっさとおまえもちんこ出せ。一滴残らず搾り取る」
「あははっ! 四季さんて常に倍返し精神すよねぇ。そういうとこ好きだけど」
「なんかしてもらったら返さねーと落ち着かねーの。やられたらやり返すとも言う」
身体を起き上げて乃亜をベッドに座らせるとケラケラ面白そうに笑われた。ベルトをカチャカチャ外して下着ごとパンツをずり下ろし、ちょっと長い前髪を耳に引っ掛けて、ガッチガチに勃起したペニスを軽く握って口にすっぽり咥え込む。
優しい手付きで髪を撫でられて、顎が外れそうなほどデケーちんこを舌で舐めながらチラッと乃亜を見上げる。乃亜の方は宣言通りずーっと俺を見てたのか、愛おしげに細めた目と視線が合った。笑みを深めて見つめられて、やっぱり気恥ずかしく視線を逸らす。
「四季さんもそーだと思うんすけど、同じこと返してほしいんじゃなくてさ、きもちくなってほしいとか、喜んでほしいとか、そういう気持ちなんすよ。だから四季さんがきもちくなってくれるだけで、俺はもう百倍お返しもらってんの。それはそれとして、張り切って返してくれんのかわいーし嬉しいんすけどね」
「ん……自分がされて嬉しいことはしてやりてーじゃん」
ペニスを咥えていた口をちゅぱっと離し、ちゅ、ちゅ、とペニスにキスを落としながら返事する。すりっと耳を撫でられて、擽ったさに少し身じろいだ。
「そう、それ。俺、あんまそういう気持ちがなくて、なんかしてもらったらあざーっすってニコニコ喜べば良いモンだと思ってたんすよ。でも四季さんには、俺が持てる全部で、なんだってしたくなる。これが愛かぁー、って感慨深いっす」
「ふはっ! たくさん愛してくれてありがとなー。俺も愛してるよ」
しみじみ言い始めた乃亜につい吹き出して、ちゅうっと先端にキスを落とした。
「んへへ、俺も愛してまぁーす。四季さんの口ん中きもちーんだけど、もう下のお口に挿れたくなっちゃった。ダメ?」
「いーよ。そんなら下の口で二回戦〜」
オッケーするともっぺんベッドに押し倒され、乃亜の頭をすりっと撫でて引き寄せる。唾液で濡れたペニスがケツにぬるっと擦れた。
「二回戦したあと年越し蕎麦食って新年祝ってー、新年一発目でどーすか? 初詣とか行くでもいーすけど」
「それ三回戦カウントじゃね? 新年祝ったら即寝して、初日の出見て初詣。からの新年一発目でどう? 多摩湖とかなら近所だし、日の出綺麗に見れそーじゃん」
「いーすけど、いくら近いつっても六時十五分くらいには家出たくねーすか? 四季さん起きれんの〜?」
「仕事ん時と予定がある時はちゃんと起きてますー。展示場の一番乗り大抵俺だろ」
頬や額に軽いキスを落とされながら、お互いくつくつ笑って話す間に乃亜がゴム着けて、長めのキスが口唇に落とされる。そこでお互いお喋りスイッチがオフになり、ちょっと黙って、なんかおかしくて、少し笑った顔のまんま見つめ合う。
「じゃー挿れますね?」
「んー、来て」
入口にくっついたペニスの先っちょがゆっくり押し入ってきて、入りやすいように、身体を解すように、ゆっくりと呼吸する。
「あ……はぁっ……ん……」
ゆっくり入れられると形がよく分かる。すっかり中が乃亜の形を覚えてて、苦もなくつぷつぷ入ってく。乃亜の首の後ろに回した腕にぎゅっと力を込めて抱き締めた。
「っ……なぁ、エッチすんの、これで何回目かなー」
「エッチした日数を一でカウントすんなら多分十一回目。一日に何回戦したかまで数えると、二十五回目くらいじゃねーすか?」
「え、コワ……覚えてんのかよ……んっ……」
「えーっ、四季さんが訊いてきたのにぃ……俺結構記憶力いーんすよ? あ、突っ込まれる前に言っとくと、宅建は暗記だけの試験じゃねーからであってぇ……来年はぜってー取りますけど。四季さんと結婚するんだしー」
奥までグーッと押し込まれて圧迫感。腹ん中が熱い。身体がぴったりくっついてんのもあって、芯からポカポカあったかい。首筋に顔を埋められ、ただくっついたまんま会話を続ける。どくどくと乃亜の心音が伝わってきて、それが心地よくて気持ちいい。
「ふはっ……あのなー、別に取れなきゃ結婚しねぇとか言わねーから。店長としての俺は、部下としての下瀬の今後のキャリアを考えるから資格取れ取れって詰めるけど、恋人としての俺からすりゃ、乃亜が隣に居てくれるだけでいーの」
「俺が取りてーんすよぉ。自信持って四季さんの隣に立てる自分になりてーの。もし会社のやつらに公表するとかなった時、今のまんまの俺じゃ四季さんが恥かくかもしれねーじゃん。そんなんヤダ。資格取ったり仕事に打ち込んだり、色んなこと頑張って、どこに出しても恥ずかしくねー自慢の彼氏になりたい」
ぐりぐり俺の肩に頭を擦り付けながら健気なことを言ってくるもので、もっと強く抱き締めた。ちょっと自信ない、俺のかわいー恋人。
「なーんでそんなにかわいーかな。俺の恋人でーすって言って回りてーくらい、乃亜は俺の自慢の彼氏だよ。俺の中ではナンバーワン」
ふっと目を細めて頬にキスをひとつ。乃亜の腰を挟んだ足に力を入れて、もっと深く繋がるように引き寄せた。乃亜は頬を緩めて、嬉しげに目尻を下げる。
「もー、そうやって甘やかす。ちゃんとリード持って躾けくんねーと、俺付け上がっちゃいますよ?」
「ん……っはぁ……乃亜は調子乗ってるくらいでちょうどいーよ。ノリにノッてるエース君なんだから、無敵スターでピカピカしとけ」
「じゃあ付け上がっちゃいまーす」
「ひゃっ、あ……ッ!」
奥まで突かれ、裏返った声が衝いて出た。付け上がる、じゃなくて『突き上げる』になってんじゃん、とか思ったけど、腰動かされ始めたらもう話してられるような余裕ない。
「あっ」しか言えなくさせられて、意識飛ばしそうになりながら必死で背中にしがみつく。乃亜の顔はずっと俺に向いていて、チクチクするくらい視線が刺さった。
顔を横に反らせば頬に、耳に、首筋にキスされる。断続的に続く射精より強い快感の波に溺れる中、頭に浮かぶのはただ『好き』って言葉ひとつ。
「四季さん、大好き」
声を掛けられて、チラッと横目で乃亜を見ると当たり前に視線が絡む。目が合ったらお互い引き合うみたいに顔が近づき、舌を絡めて口づけた。
運命とか、あんま信じてないけど。運命かもとか、バカみてーに言いたくなる。いやまあ、もう運命ってことでいーんじゃね? だって俺もう、乃亜が最後の恋じゃなきゃヤダ。
「あっ、んぅッ、あー……ッ、イく……ッ!」
「はぁっ……四季さん……っ!」
イく、ってとこで足が浮きそうになったけど、乃亜の腰をガッチリ足で挟んで抱き締める。突き上げられるまんま射精感に身を委ねると、先端からダラッと精液が溢れ出た。俺の肩掴んでる乃亜の手にも力が入って、その後ふっと力が抜ける。
「はぁっ……はぁっ……ンむ……っん……」
短く荒い呼吸を整えていると、口唇が奪われる。舌を絡めて、深くキスして、酸素を分け合った。射精した後も、くっついたまんま繋がってんのが好き。
「……暑っつぅー。冷房付けていい?」
「流石に身体冷えちゃいません? 新年早々風邪引いちゃったら可哀想。四季さんは上着たまんまだったし、まず脱ぎましょっか」
「ん……」
目を細めて見つめられ、小さく頷く。汗ばみ額に張り付いた前髪を乃亜に指先で払われた。次いで軽く額に口付けられ、上体が離れて、服をするする脱がされていく。
「二回目はくっつかない体勢の方がいーすか? 俺も汗掻いちゃった」
「それはヤダ。あちぃけどくっつきてぇ」
「えへー、俺も。離したくない」
ハグを強請って両手を広げると、ふにゃっとした笑みを返され抱き締められた。離れた上体がまたぴっとりくっつく。
「うん。離れないで」
「四季さん、甘えたモードだ。離れねーっすよ」
「そ、甘えてんの。てか、俺が離さねー」
楽しげに声を弾ませる乃亜の頬に頬を押し付けて、甘えた声で返事した。
「俺も離さねーし、逃がさねっす。ゴム替えるんでいっぺん抜くけど、逃げても追い掛けちゃいますよ〜。俺、ねちっこいんで」
「んっ……エッチの時は、まあそーな。つか、フツーにこの体勢じゃ逃げらんねーだろ。全力でブン殴って不意付いても抜けられっかどうか」
ガチガチにデカくなったペニスをぬぷっと抜かれて、熱っぽい吐息が漏れる。覆い被さられたまんまだから、逃げようったって逃げられん。てか、俺も抱き締めてるし。
「暴力反対〜。今だけの話じゃなくて、一生逃がさねーからって話っす。ゴム着け替えたから挿れますよー」
乃亜はちゃっちゃとゴムの口を結ぶとポイッと捨ててて、もっぺん中に押し入ってきた。背に回した腕に力を入れて、捕まえるように引き寄せる。
「ひゃっ……あっ、ン……っ乃亜の方こそ、逃げんなよ……っ一生、俺に捕まえられとけ」
「俺が捕まった側っすか? 喜んで捕まりまぁーっす!」
口角を上げて見上げるとバカみてーに明るく笑った顔が近づいて、口唇がくっついた。そのまま二回戦目にしけ込んで、まだ日付変わるまで時間あるからって延長戦。
年越し三十分前にバタバタと一緒にシャワーを済ませ、慌ただしく蕎麦のカップ麺に湯を注ぐのだった。
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