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「そうなんスか……」
もったいないといった顔つきをした鐘崎 に、
「なに、今度は経営陣としてビシビシ鍛えてやっから!」
と言って悪戯そうに笑った。
「よっしゃ! これで持ってくモンは最後だ。一之宮 、お前さんの荷物運び入れていいぞー」
「あ、はい! ありがとうございます!」
「なんか手伝うことがあったらいつでも声掛けてくれな!」
にこやかにそう言うと、綾乃木 は台車に乗せた荷物を引きずって新しい住処へと移っていった。
「よし、一之宮 。それじゃアンタの荷物運んじまおうか。俺は引越し作業がねえから手伝うぜ」
「あ、マジ? サンキュなぁ!」
二人は早速作業に取り掛かった。
一方、隣部屋の周 らの方でもまったくもって似たような会話がなされていた。
周 が昨年度に組んでいたモデルは李狼珠 という。彼もまた周 と同じく香港の出身で、レベルもテンのベテランだった。年齢も綾乃木 と近いことから、やはりモデルを引退して今後はマネージメントの任務に移るという。周 と冰 、鐘崎 に紫月 らの専属マネージャーとなって面倒を見てくれるとのことだった。部屋は綾乃木 の隣だそうで、同じペントハウスの住人ということになる。仕事はもちろんのことプライベートでも頻繁に顔を合わせることになるだろう。
周 の方はあらかじめそのことを聞いていたので、特には驚くこともなかった。
「紹介しよう。雪吹 、こちらは李狼珠 だ」
その李 にも冰 のことを紹介する。
「キミが雪吹冰 さんですか。噂通りの可愛らしいモデルさんですね。周 さんのことよろしく頼みますよ!」
「あ、はい! こちらこそ……! どうぞよろしくお願いいたします!」
冰 からしてみれば大分歳上の李 だ。にもかかわらず丁寧な敬語で接してもらえて、冰 はますます恐縮してしまった。それこそ機械仕掛けの人形の如く、緊張の面持ちでガバリとお辞儀をした様子に、横から周 がクスッと笑う。
「おい、そんな畏まることはねえと言ったろうが。李 とはこれからも毎日顔を合わせることになるんだ。気楽にいけ、気楽に」
そう言われても緊張するなという方が無理だ。「ありがとうございます」と言いながらも表情は強張ったままで頬だけ真っ赤に紅潮させている。オーナーのレイによると、若いながらも神級と言われるほどの実力の持ち主だと聞いていたが、当の本人はそれを驕るでもなく非常に謙虚で生真面目な青年のようだ。だがまあ、周 にとってはそんな律儀さも微笑ましいと思えるもののようだった。
「雪吹 、お前さんの部屋は階下 の大部屋だったな。荷物はどれくらいあるんだ? 李 と一緒に手伝うぞ」
どうやら二人で手伝ってくれるらしい。
「よ、よろしいんですか? ご足労をお掛けしてしまい恐縮です!」
まさかトップモデルの周 自ら引越し作業を手伝ってくれるとは思ってもみなかった為、冰 は驚きと申し訳なさとで目が回りそうだった。
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